LOVE THB WORD 11



あんな大それたことを決意した癖に、すぐに行動に移せるほど人間がすぐに変われるはずもなく。
私がリゾットへの連絡をしなければと思いながらも通話ボタンを押せない日々を過ごしていたある日。
突然リゾットのほうからチームへ緊急招集がかけられた。

私はその連絡に助けられたような、出鼻を挫かれたような、複雑な気持ちを抱えたままアジトへとやって来ていた。

既に揃っているメンバー達は、いつも通り雑談をしている様子だが、それに交じる余裕が私にはなく、俯いてただリゾットが現れるのを待った。

「今日は急に呼び出してすまない」

部屋に入ってきて重苦しくそう言ながら、ソファーに腰掛けるリゾットを見て、呼び出しを受けて待機していたメンバーたちに緊張が走る。

緊張するのは当然のことと言えた。
なぜなら月に一度の定例以外でリゾットがメンバー全員を集めることは大変珍しいことだったからだ。

「わざわざ呼び出すってことは相当重大な話なんだろうな?」

「…ああ」

プロシュートの問い掛けにリゾットは小さくそう答えてから少し間を開けて言った。

「なまえがチームを抜ける事になった」

「…え?」

リゾットの言葉に私が呆けたような言葉とも言えない音を漏らして唖然としていると、一拍おいてから部屋中に驚きの声が響きわたった。

「はーーーー!?抜けるってなんだよ!?」
「そんなんあんのか?」
「つーか、抜けられんのか?」
「なまえは知ってたのかよ!?」

自分よりも驚いた様子でメンバーたちが詰め寄ってくる姿を見て、そんなの私がしりたいと言いそうになるのをぐっと抑える。
とにかく何が何だか、説明を聞かないことにはどうしようもない。
私は焦る気持ちを落ち着かせるように小さく、ゆっくり息を吐いて呼吸を整えて、なるべく冷静な低い声で私は、リゾットへ問いかけた。

「抜けるってなに、そんなの聞いてない」

「突然来たんだ、なまえはチームを抜けて別の任務につくそうだ」

「なに、それ。私、どこに行くの?」

「わからない。後日なまえに直接指示が来るらしいが、俺には知らされていない。」

「ねえ、まさかとは思うけど、リゾットが私を飛ばしたの…?」

本当はこんなこと思いたくは無かったが、彼の告白を受け入れず有耶無耶にしたことを恨まれてチームを追われたのではと考えずにはいられず、疑問がポロリと口に出た。

リゾットはそれを聞いて大きくため息をついてから話した。

「いや、俺からは何も。本当に突然通知が来た。」

そう言ってリゾットは手に持っていた封筒を私に手渡した。

中には今日付けで私がチームを離れて別の任務に抜擢すること、内容は機密扱いの為、後日知らせることのみが書かれていた。

抱えてきた色々なものにやっとケジメをつけて、リゾットやチームのみんな、それに仕事にも向き合っていこうとしたこんなタイミングで、なんで、と思わずにはいられなかったからだ。

「…なあ、なまえ。正直に答えて欲しい。…本当はお前が出したんじゃあないのか?移動の希望を」

「っ!私が?なんでよ!」

こちらを射抜くような目で話すリゾットを見て、溢れそうになる涙を私は必死に堪えながら訴えた。

「俺から逃げたかったんだろう」

「っ逃げようとなんかしてない!」

「じゃあどうしたかったんだ!気まずかったんだろ、俺と同じチームにいるのが!」

「ちょっと待ってよ、確かにそう思ったことだってあるけど、私は向き合おうとしてたわ!」

「あー、ちょっと落ち着け、リゾットもなまえも、な。」

プロシュートがそう言って制止してくれたおかげで、やっとここにチーム全員がいることを思い出して、私はハッとして周りのメンバーの顔を見た。

メンバー達は、私とリゾットに何があったのか察しがついているのだろう。
悪事を盗み見るように笑っていたり、バツの悪い顔をしたり、呆れ返っていたり、その反応は様々だった。

なにがチーム内にバレないのが条件だ。
リゾットと私が男女関係にある事はもはや火を見るより明らかだ。

言葉に詰まった私を助けるようにプロシュートが話し始める。

「とにかく、だ。リゾットも通知が来るまで移動なんて知らなかった、なまえも同じなんだな?」

「ああ」
「そうよ、」

「つーことはこれは幹部か、ボスになまえが引き抜かれたってことなんじゃあねえか?」

プロシュートの分析のお陰でなんとなく分かった移動の理由。
だが理由がわかったところで、それに納得できるかは別だ。

「拒否できんじゃねーの?」

「いや、ホルマジオ。どこから来てるか分からない通達だ。下手に逆らうのは得策じゃあないだろうな。」

「俺もイルーゾォに同意だ。お前は?メローネ」

「俺もイルーゾォとギアッチョに同意。命令なら従うほうがいいと思うね」

「お前はどうしたいんだ、なまえ」

リゾットがそう言って真っ直ぐにこちらを見つめてくるのを私はどこか他人事のように眺めながら、笑おうとしたのに、目のはしからボロボロと涙が溢れだして止まらなくて、うまく笑えなかった。

「っっ離れ、たくない、よぉ、」

そう言って泣き出した私にメンバーが固まった。

「…お前がこのチームにそんなに思い入れがあるなんてな」

「ハ、ちげーねーな!いつ可愛げねー女だったくせに、こんな時だけカワイコぶんじゃねーよ」

口ではそう言いながらも、みんな心配してくれているのだろう困ったように笑っているのが見えた。
私だって驚いてるんだ、私こんなにこのチーム好きだったのかって。

近くにいたプロシュートやリゾットがポンポンと頭を撫でて慰めてくれるのが余計に辛い。

「お前が望まないのなら、俺が掛け合ってやる、」

「…いいわ、リゾット。指示に従って移動はする。でも、すぐに戻ってきてやるわ、このチームに」

「ハハハ、やっぱお前可愛げねーわ」
「だな、」

「待っててやるよ、仕方ねえから」

ああ、もっと早くこのチームに心を開いて馴染む努力をできれば良かった。
メンバーが私を受け入れてくれていたのになんで私はもっと早くみんなと向き合えなかったのか。

この出来事で私は、世の中は思った通りには進まないものだと、再自覚されられた。


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