(若干NTR要素あり)
僕は、自分で言うのもなんだがアバッキオには嫌われていた、と思う。
最初から、彼の僕に対する態度は冷ややかであったし、僕を信用していないのはチーム全員が分かるほどだった。
何処が嫌だったのか、彼は伝えてくれなかったし、僕もあえて聞かなかった。
そして、僕と彼はそのまま打ち解ける時間も無く永遠の別れを迎えた。
(アバッキオ、君は最後くらいは僕を信用していてくれたかな…)
人間、苦手な相手というのは必ずいるものだ。
彼にとっては僕がそうだったように。
ちなみにこれは僕の持論だが、人が人を嫌う理由は二種あると思っている。
自分と異なり過ぎていて理解出来ないからか、もしくは自分と似過ぎているからか、のどちらか。
アバッキオは今にして思うと後者であったのだと思う。
彼女と出会ってからは特にそう思う。
「愛していますよ、なまえ」
「…私もよ、ジョルノ」
冷たい月が差し込むベッドの上で、互いに一糸も纏わない姿のまま、僕は彼女を後ろから抱きしめて、たっぷりと毒を孕んだ甘い声でそう囁く。
彼女は僕の言葉に震えた声で同意した。
その声を聞いて僕は心が満たされていくのがわかる。
彼女はなまえ。
アバッキオの元彼女で、今は僕の彼女。
整ったパーツで構成された美しい造形の顔と、艶っぽい目元、スッとした立ち姿に繊細な所作。
出会った瞬間から、彼女は僕の求める完璧な女性だった。
彼女と出会ったのはアバッキオの葬儀だった。
遺体も持ち帰れなかった僕たちを責めもせず、ただ呆然と空の棺に向かって泣き続ける彼女がとても美しくて、僕は目を奪われて動けなかった。
あんな不謹慎なタイミングで僕は彼女に恋をしたのだ。
一目見た瞬間に彼女がほしくて仕方なかった。
それから、ボスとして、アバッキオの後輩として様子を見る、という口実を作って、僕は彼女の元に通い落ち込んだ彼女をそそのかして、僕の優しさに依存させて、そうしてやっと彼女を手に入れた。
周囲にどんな風に言われても良い、彼女さえ手に入れば、それで良かった。
例え、そこに彼女の気持ちが無かろうと。
「ねえ、なまえ。明日は君の好きなフォー・シーズンズのテラスを予約しました。昼に迎えに来るからとびっきりのお洒落をしておいて下さい。…そうだな、こないだ買ったアルマーニのワンピースなんてどうです?」
僕に抱かれた後、罪悪感に潰されそうになりながらも、腕の中から抜け出せない、彼女の弱さが僕は好きだ。
亡くなっても尚、アバッキオを愛し続けるいじらしさが好きだ。
「…アルマーニのワンピースね、そうね、あれを着て待ってるわ」
そして、アバッキオを愛してる癖に、僕に依存して言うことを聞いてくれる所ももちろん好きだ。
「フフ、楽しみですね。そうだ、どうせならそのままスイートにでも泊まりますか?」
「いいのよ、ジョルノ、わざわざそこまでしてくれなくても」
先程まではアバッキオに罪悪感を抱いていたのに、今度は僕へ罪悪感を持っているらしい。
本当に、なまえは愛らしい。
わざと罪悪感を煽ってる僕に騙されて、踊らされて。
「なぜ?遠慮しないで。僕はなまえが喜んでくれるんだったら何だってしたいんですよ、君の喜んだ顔が見れたらそれでいいんです」
「…ありがとう、」
彼女は僕の腕の中で、身体を反転させると僕の目を見つめてお礼を言ってから、顔を寄せて僕の頬へキスをした。
ゆっくりと唇を離して、子供をあやすように優しい目で僕を見つめるなまえに、僕はお返しするように、ぷっくりとした唇に噛み付くようなキスをした。
「っんん、ん、」
先程行為を終えたばかりなのに、今日はまだまだ終われそうにもない。
彼女の胸の頂にそっと指を遣わせて、コリコリと刺激をしてやれば彼女はビクリと腰を震わせた。
「もう、ジョルノ、さっきシタばかりなのに、」
長いキスを終えた彼女は、唇の端についたどちらのモノとも言えないヨダレを手の甲で拭いながら、もう片方の手で僕の肩を軽く押してそう言った。
「ダメですか?」
そんな弱い力で僕の肩を押したって意味なんかないのに。
僕は肩にあった彼女の手を掴んで引き寄せ、腰に手を回すと、今度は彼女の白い首筋に舌を遣わせる。
「っあ、ん、」
すぐに甘い声を出して腰をクネらせる彼女に僕は口角を上げる。
「なまえ、君は本当に可愛いよ」
「アナタだって本当に可愛いわ、ジョルノ」
「それはどう言う意味?」
「さあね」
そう言って彼女は僕の唇に深いキスを落とした。
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