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「おい、ジョルノ聞いているのか?」

「、すいません、もう一度お願いできますか」

「おいおい、一体どうしたってんだ」

「…らしくないな」

ジョルノはこの日、仕事に全く身が入らないでいた。
それはジョルノが知りたくなかった事実を知ってしまい、どうしてもそれを消化しきれずにいたからだ。

「何かあったか?」

そうブチャラティが問いかける横で、アバッキオも眉間にシワを寄せて心配そうにジョルノを見ていた。

「すみません、仕事の事ではないんですが、ちょっと考え事をしていました、」

バツが悪そうな顔でそう言ったジョルノに対して、アバッキオとブチャラティは互いに目配せをしてから、書類をテーブルへと置く。

「珍しいな、お前が仕事以外に気を取られるなんて」

「どーせ、急ぎの打ち合わせじゃあねえんだ。おい。何があった。聞いてやるから話せ」

ボスではあるが、ジョルノは後輩だ。
こんな時くらい彼を年相応に甘やかしてやろう。
そう考えてブチャラティとアバッキオは、ジョルノの悩みを聞こうと声を掛けた。
ジョルノはそんな2人の優しさに対し、少し迷いを見せた後ゆっくりと話し出した。

「…実は先日、なまえに振られました。ええ、大した話じゃあないんです。ただの失恋です。…本命がいると言われましてね。言われた後、一晩考えたが諦めがつかなかった僕は諦めるつもりがないと伝えたんです。まだチャンスがあると思って。だが、なまえは今後本命以外と食事をするつもりがないから、誘わないで欲しいと言ったんです。」

「「!!!」」

まさかジョルノが悩んでいる理由が失恋とは。
予想外の出来事にブチャラティとアバッキオは言葉も無かった。

「それでも僕は諦めきれませんでした。なんせ彼女のことを5年近く口説居ていましたから。簡単に諦めることなんてできない。だから、せめて相手の男を知りたくて、その話をされた翌日、人を雇って彼女の後を尾けた」

「…、」

「…ジョルノ、それはさすがにねえだろう。それはストーカー野郎の発想だ」

黙りこむブチャラティと、ジョルノに率直な意見をぶつけるアバッキオ。
2人の反応を見て、ジョルノはバツが悪そうにため息をついた。

「ええ。分かっています。自分がどれだけゲスな男に成り下がったかは、僕が一番ね。本命が居ると言われた翌日に相手を突き止めようとミスタに相談した時にも同じ事を言われました。そしてやり過ぎだと思い一度は辞めた。だがしかし、そのあと食事すら行かないと言われて、もう止められなかったんです!」

「…そうか。まあ同じ男してわからなくはねえ。お前もそう思うだろう、ブチャラティ」

「…ああ」

「んで?尾けて収穫はあったのか?」

「…ええ。ありました。なまえの本命を僕は知ることが出来ました」

「なに?彼女に本命が?」

ブチャラティに聞かれ、ジョルノはゆっくりと瞬きをしてから言った。

「ええ。相手はリゾットです。暗殺チームリーダーのリゾット・ネエロ。」

「…リゾットか。」

「おい。それは本当に確かなのか?」

アバッキオが感心したように言った後、ブチャラティは強い口調で聞き直す。

「ええ。僕とはもう食事に行かないと話した次の日になまえはリゾットと食事をして、ホテルに行くのを僕が雇った男は見ました」

「そう、か…」

「…おい、ブチャラティ。これは俺の考えすぎかもしれないが、質問したい。俺の記憶が正しければ、お前はなまえとそんなに仲が良かったようには思えねぇ。なのにだ。今日の話にやけになまえの話に食いつく。なあ、それは俺の気のせいなのか?」

そう、アバッキオは先程から気になっていた。
自分と同じく、彼女に興味がなかったはずのブチャラティがやけにこの話題に関心を持っている事を。

「…実は、先日なまえと2人でディナーをした」

「「!!」」

ブチャラティの発言に、ジョルノとアバッキオは驚いた。
この5年間で一度も2人が接点を持ったのを聞いたことも見たこともなかったからだ。

「ディナーと言っても、デートではないさ。ただ、彼女がジョルノに頼まれて書類を持ってきたとき、ついでに飯を食っただけだからな。だが、俺はその時、彼女の知らない面を見て噂とは違う女だと思った。男を転がして遊ぶ女という噂とはな。だが俺も転がされたのかもしれない、と思ってね。…すまない、今はジョルノの話を聞くはずが、つい彼女について知りたくなってしまったんだ」

「…、待ってください、ブチャラティ。…書類を運んだ日にディナーを?」

ジョルノが確認をするのようにゆっくりと聞き返すと、ブチャラティはああ、と答えた。

その瞬間、ジョルノは自分が盛大な勘違いをした事に気づく。
なまえが、本命と会うと言った日に会っていた相手はブチャラティだ。
そして、翌日なまえは今後は本命以外と会わないと言ってジョルノの食事を断り、翌々日リゾットと食事をしてホテルに行っていた。

それらの事実から考えだすとおそらくリゾットはセフレか何かであり、ジョルノと同じように関係を切られた。
もしくは本命はブチャラティ、保険はリゾット、というところだろう。

(なんて事だ、)

どちらにせよ、なまえの本命というのはブチャラティだ。
予想外の事実にジョルノは驚いた。
5年働いていても2人がプライベートな話をしているところすら見たことがないし、今まで彼女とブチャラティにはジョルノが居ない時に接点すらなかったはずだ。

なぜ、いつから、そんな気持ちがぐるぐるとジョルノの思考を回り続ける。

だが、そんなジョルノに気付くことなく、アバッキオは話し続けた。

「…俺には全くわからないぜ。あの女の魅力ってヤツがな。確かにあの顔と身体だ。モテるだろうよ。だが、ジョルノ、そしてブチャラティ。お前らをそこまで夢中にさせる意味がわからない」

「はは、俺だってそう思っていたさ。だが、一度の食事でイイ女だと思ってしまった。アバッキオ、お前も話してみれば、案外夢中になるかもしれないぞ」

「フン、興味ねーな」

ジョルノは理解していた。
ブチャラティに教えてあげるべきだと。
今の話を聞く限り、ブチャラティも彼女を気があるはずだからだ。
2人の幸せを考えればどうすべきかは明らかだ。

だがジョルノはどうしても言うつもりになれなかった。
それは負け惜しみと言う、格好のいい物でない事だけはジョルノにも理解していた。



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