「別に!!なんでもないっ!気にするなドブ男っ!」

「なっ…ヒルダ!?って、……あれ、…え……」


ずるいって言わせて(ヒルダの場合)
の男鹿視点になります。

ずるいって言わせて (男鹿の場合)



***




今日はヒルダが料理を作るとか。

そういえばそう言ってたっけ…。


奇怪な味を想像して青ざめながら、下校する。
肩のベル坊は呑気に鼻歌なんか歌っているが。

「お前、やっぱ魔王の子だけあるわ。」

「だ?」

「でもまぁ…俺も、嫌じゃねぇ……かもな。」

四六時中、ベル坊のことだけを忠実に想い、敬い、考えているアイツが、俺のために料理を作ってくれる。
なんとなく嬉しい。
なんつーか、なんでだろうなァ…。

「ま、俺のためってかベル坊のためなんだろうけどな。俺はおまけなわけな。」

それでも、俺の分も作ってくれて。

人間界の食べ物や調味料の扱い方がいまいち分からず悪戦苦闘しているヒルダが目に浮かぶ。

俺は少しだけ苦く笑って。

「意外と可愛いとこもあるんだよなぁ………」 


***


「ただいまー…………って姉貴?」

「おかえりっ!あっ…ベルちゃんおいで!」

「だぁぶ?」

「姉貴?……んまぁ、はいよ…。」

姉貴の物凄い剣幕にあろうことか気圧され、言われるがまま、ベル坊を預ける。

「じゃっ、ちゃんとやんなさいよ!」

「???」

そして姉貴は謎の言葉を残して、足早く自室へ行ってしまった。

……なんだァ?
姉貴の奴………。

少し疑問に思いながらも、自分も自室へ向かった…





なんだ、これは……。


「ヒル、ダ…?」

足を止めて目を瞬かせる。

目の前にいるのは極悪非道、ドSな侍女悪魔。でも、いつもきっちりまとめられている柔らかな金の髪はふたつに結われていて、俺を睨む瞳は、いつもの冷たいものではなく、恥ずかしさが見える。白い頬も赤く染め上げて。

髪型を変えると性格まで変わるのか…?
女らしくなってるぞ!?




いや、これもこいつの性格の内だろうな。


「…なんだ。」

「あ、いや…その…。〜〜〜!」

「!」

サラサラな金の髪を撫でる。くずれないように、ふわりと。

「なっ……!?」

「…んだよ、……かわいいじゃねぇか。」

ぽつりと呟く。

さらり、ヒルダの髪が少し頬に触れ、くすぐったい。

「む、」

「ん?なんだよ?」

「別に!!なんでもないっ!気にするなドブ男っ!」

「なっ…ヒルダ!?」

理不尽な言葉を浴びせられ、怒る…
怒るはずだったのに。

「…って、……あれ、…え……」


そんな可愛いとこ見せられちゃ…な。

言葉と裏腹に赤い頬がちらりと見えて。


反則だと思う。
いつもと違う髪型も。
ふわりとかすめた残り香も。
照れた顔も。


不意にどきりとさせられる。



「ずるい……。」




* * * * *


男鹿視点でした!






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