「あのさ、」
それは信じがたい光景で。
無論ありえない、予想もつかなかったわけで。
当然頭なんて追いつかなくて。
「「何」」
っ…!
なんで…
振り向いたのは金髪の緑の目した居候…だけではなく、それはそれは長い付き合いの古市くん。
ちなみにこの部屋は、そんな大親友の古市くんの部屋だ。
正直…
声がハモってるのもムカつく…。
?
ムカつく?なんでだよ?
どこに苛つく要素あったんだ??
ひとり悶々と考えを巡らせる。
自分から呼び掛けておいて、口ごもった男鹿を見て、首を傾げ、もう一度視線を元に戻す二人。
「(ヒルダさん。珍しいですよね、男鹿が言いよどむなんて。)」
「(あぁ、そうだな。しかし…今はこれを見なくてはな…)」
ん?
内緒話してる?
ヒルダと古市が?
何話して…
じゃなくてっ!
何企んでんだ?
この善良な少年を差し置いて。
…別に。
話の内容が気になるわけじゃない。
古市とヒルダの距離が近いのだって、さして気にすることではないはずだ。
ただ、アイツらが悪巧みしてるんじゃないかって、善良で美しい心を持つ俺としては放っておけないだけっていうか。
「何、してんだよ。」
情けないことに出る言葉はたったの7文字。
もっと何か言いたいはずなんだけどな。
「「え?」」
「「雛鳥の羽ばたく日〜成長記録〜」」
「は?」
耳を疑う答えに、思わず間抜けな声を出してしまう。
「うむ。橋の近くを散歩する度、見るのを楽しみにしていた小鳥がおってな。」
「?」
「橋の下に巣があったが、橋の下はじめじめしていて、あまり快適そうじゃないな。だが、」
『ピピピ…』
「あの雛鳥も飛べるようになったらしい。あの木に止まっているのがそうだ。」
優しく微笑むヒルダ。
それはベル坊にしか向けたことのない柔らかな笑み。
俺は少しの間、そんなヒルダをほうけて見てたが、古市の一言で、穏やかな春が去り、頭の中は冬へと早変わりだ。
「あ、お兄ちゃん鳥だ。相変わらず仲いいな、あの兄妹。ね、ヒルダさん。」
「あぁ、微笑ましいな…。」
古市=鳥のことを前から知っていた
ヒルダ=鳥は散歩中に見た
古市&ヒルダ=………
一緒に散歩していた!?
「ヒルダ…」
「なんだ?」
「散歩、行くぞ。」
「は?いきなりなんだ。そもそもなんで私が貴様なんかと…」
ヒルダが言い終わらない内に強引に手を引いて、部屋を出た。
後ろから何か聞こえたが、知ったこっちゃねぇ。
男鹿は古市の言葉も聞かずに部屋を出て散歩に行ってしまった。
その言葉が
「男鹿、負けないよ?」
宣戦布告とも知らずに。
「ヒルダさんが雛鳥の成長記録なら、俺は男鹿の成長記録つけよっかな。」
古市はひとり呟くと、いつの間にか3羽になった小鳥たちを眺めた。
あと少し、あと少しであの鈍感くんも気付くだろう。
* * * * *
初!男鹿ヒル古!
無自覚余裕ナシの男鹿と
狙われてる兎状態なヒルダ。
そして珍しく強気な古市くん。
古市とヒルダが仲良しだと
いいなぁと思い、書きました!
でもやっぱり男鹿ヒル寄り(笑)
というか、小鳥ネタ引っ張りすぎだww←
ちなみに小鳥銀神のところに来たのは神威鳥さん。
小鳥も宣戦布告中です。