夏。

空は快晴。
青と言う青。

じりじりと照る日差しに、温度の高い風が生温く吹く。

こんな季節誰が好きになれると言うのだ、



男は夏の暑さに耐え切れず、乾いたアスファルトに視線を落とし、気怠そうに声を漏らすのだった。

「あちぃー…」

そして、その原因である太陽を恨めしそうに睨み付ける。

「ふっふふーん♪」

そんな男とは対照的に、隣りにいる友人は鼻歌を歌っており、至って楽しそうだ。

「…お前、なんでそんなに楽しそうなの…」

「聞いてくれるかい男鹿くーんっ!明日から夏休みだろ!夏休みと言えば海!室内プールも良し!女の子の水着姿をだなぁ…」

こちらが止めない限り延々と続くであろう、水着談義を始める友人。その姿は夏の暑さをものともせず、いきいきしており、正直暑い。暑苦しい。

自分は家に辿り着くまで、必死でストックしていた微かなHPを削ってまで、声を出して聞いたと言うのに。

男は限界だった。
MPの限界だった。
じりじりと強い日差しによりHPのみならず、じわじわとMPも削られていたのだ。

とりあえず

鼻血が出そうになっている友人に足を掛け、本当に鼻血を出させてやった。


「なんかむかつくから。」

「な…なんかむかつくからじゃねぇ!!いきなり何すんだ!鼻血出しながら水着談義をしている俺!まるで変態じゃねぇか!!」

「いつも通りだろ。」

「俺は変態じゃねぇっ!…まぁ、強いて言うなら…恋のハンターかな…(* ̄ー ̄*)…ちょっ殴んないで!」

男、男鹿は溜め息交じりに、気怠そうに肩を下ろした。

「お前だってさ、楽しみじゃねぇの?」

「…なにが。」

「ヒルダさん。大学も夏休みだろ?」

「それがどうした…。」

「ヒルダさん、免許取ってたよなぁ。海、連れてってもらえば?いやむしろ俺がヒルダさんに連れ去られたい。」

「……………。」

俄然テンションが上がった友人、古市を尻目に男鹿は溜め息を零した。



男は思った。





海か…





と。



「ちゃっかり考えてるじゃねぇか!!」





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