Hers・Heart | ナノ
季節は夏。
夏休み間近。
成績を出したり、資料を整理したりと、教師陣は忙しいらしい。
夏は暑くてあまり好きじゃない…な。
だけど夏休みは嫌いじゃない。
ゲームだって1日中できるし、昼寝だって長い時間できる。……あと、ヒルダとどっか出掛けられるしな。
ヒルダといる時間はけっこう楽しい。
古市然り。
だけど一緒にいた時間は古市より圧倒的にヒルダの方が長い。だから余計に。
気を使わなくていい、お互い言いたい事が言える、そんな仲だ。
「ん?ヒルダ?」
夏休みのことをぼんやり考えながら歩いていると、前方にある資料室から彼女…ヒルダがでてきた。どうやら授業で使う物を持って行くように頼まれたらしい。
……ずいぶん重そうだな。
「ヒル…「ヒルダちゃん重くない?」
言いかけた言葉は止まり、伸ばしかけた手を引っ込める。
「俺、手伝うよ?」
「大丈夫だ。心配ない。」
「…そ、そっか。それじゃ、またね!」
……ばぁか。
いじっぱりめ。
「ヒルダ!」
「男鹿。」
「寄越せよ。運んでやるから。」
「む。分かった。頼んだぞ。」
「おうっ!って全部かよ!!」
「丁度重いと思っていたのだ。男鹿が来てくれて助かったよ。」
「……そうか。」
「そのっ……、あり、がと。」
赤い頬を隠すかのように、勢いよく前を向いて歩き始めるヒルダ。
いじっぱりで、強がりで、照れ屋な彼女。
そんなん昔から知ってんのは俺だけだ。
ばぁーか…
全部お見通しだっつーの。
ヒルダは甘えとか頼る事を知らない。
ヒルダの両親は最近になってまた海外で働いているし。
ちっちゃい頃からアイツが頼れるのは俺だけなんだ。
『おにぃちゃんっ……!』
「おい。」
「!」
「何をさっきからにやけておるのだ。」
「…!…………。ふっ…」
「?」
「………べっつにーー」
fin.