Hers・Heart | ナノ




「はよ…」

「あぁ、おはよう。」

ほぼ同時に扉が開けば左側には彼女、幼馴染のヒルダ。
こう見えてもアイツはいっこ下。
…まぁ、幼馴染でお隣に住んでいるヒルダは腐れ縁もなんとか、学校も同じなわけで、だいたい朝は、こんな具合にばったり!がお決まりのパターンだ。そんで、一緒に登校すんのもお決まり。

「そういえばさ、お前今日放課後空いてる?」

「?空いているが…、なんだ?」

「あぁ…、お前に会いたいって俺の友達がうるさくてな。」

「………。」

あからさまに眉をひそめるヒルダ。
ま、当然だよな。イキナリこんなこと言われたら。

「ホラ、あれだ。古市。よく話してたろ。」

「あぁ…。ふるいち。」

その名を聞いて、少しだけ警戒心が薄れたらしい。
俺と古市は高校に入ってからの知り合いで、なんだかんだで馬が合って、よく放課後とか遊ぶ仲だ。
古市とつるむようになってからは、ヒルダとの話題によく上がっている。

「ふるいち。」

ヒルダはまた、ぽつりとアイツの名を呟く。

「ん?」

「うむ、私も会ってみたかったのだ。」

「そうか。アイツ喜ぶな。まぁ…アレだ。あんま期待すんなよ。俺の方がかっこいいから。」

「フン、うぬぼれるな。」

「はいはい。」

悪態をつく、いや、気が強いのは昔から変わってないな。

***

それからいつも通り他愛もない話をしながら学校まで歩いた。

「フ、それでは放課後…。」

「あぁ、詳しくはメールするわ。」

ヒルダは1年の教室に、俺は2年の教室にわかれた。


***

―放課後



「男鹿ッ!!」

「なんだよウザ市。」

やたらハイテンションな友人に少し怪訝な顔をする。

「んだよ、ヒルダちゃんに会わせてくれるんだろ?なのに落ち着いていられようか!いや、いられまいッ!!」

「……はいはい、今メールすっから。ちょっと待て。」

「ワン!」

「いや、犬か!どんだけ楽しみなんだよお前。ほんと女子好きだな。」

「ちげーよ。いや、女子好きなのは否定しないけどさ。」

「しないのかよ。」

「…ヒルダちゃんだからだよ。」

「は?」

「お前から話し聞いてて、会ってみたいって俺も思ってたから。」

「……ふーん。」

なんだか面白くなかった。
何でかわかんねぇけど。

ふたりとも同じ事言うのな…。

〜〜♪

「お。今教室来るって。」

「お、返信早いな。」

「まぁ、な。打つの速いからなアイツ。」

「ふーん…。」


「男鹿!」

「ヒルダ。」

ヒルダはさらりと金の髪をなびかせ、教室に入ってきた。
緑色の瞳が、俺を促す。

「あぁ、古市、ヒルダね。ヒルダ、コイツが古市。」

「はじめまして、ヒルダちゃん。」

「はじめまして、古市。」

「あぁ、俺の事はたかゆきって呼んでいいよ。」

「なんでだよ。」

「いいじゃん男鹿。」

「…ふるいち。」

そう、ヒルダが呟けば、

「…まぁ、いっか。」

まったく、これだから女好きは。

「てかヒルダちゃんって大人っぽいよね。年下には見えないよ。」

「よく言われる。逆に男鹿が子供すぎるのではないか。」

「まぁ、確かに。」

「何言ってんだ。ヒルダなんかいまだにぬいぐるみと一緒に寝てんだぜ。」

「はっ!?そんなわけないであろう!嘘を申すな!!」

「嘘じゃないです〜〜」

「なぜ男鹿に分かるのだ!?」

「ヒルダの事はなんでもお見通しなんです〜〜」

「ぐっ…!!じゃぁ、私のその抱いているぬいぐるみの種類は分かるか?」

「うさぎだろ。」

「ッ!!?…じゃっ、じゃあ、私の好きな色は!?」

「ピンク。実は黒より白派、だろ?」

「〜〜〜!!違う!!ぜんっぶ違う!!」

「なにが違うんだよ。じゃあ、アレか?昨日ゲーセンで取ったうさぎのストラップやんない。」

「なっ!?それとこれとは話が違うではないか!!」

「だよなぁ〜。じゃあ、私は可愛いものが大好きです。だからどうかそれを私に下さい、辰巳様、って言いなさい。」

ぐにっ

「いへーーほ!ははへ」

(訳:いてーよ!はなせ)

さすがにいじめすぎたかなって思った時にはもう遅く、ほっぺを思いっきりつねられた。

お返しにとばかりに、きれいにきっちり結ばれた金の髪を引っ張る。

「離せ!髪がちぎれる!」

「お前がその手を離したらな。」

「男鹿が先に離せ!!」

気付けば取っ組み合いの喧嘩寸前。
日常茶飯事っていえばそうかな。
昔からこんな感じだから。


「(ぬいぐるみプラスヒルダちゃん……)…………イイ!」

「「は?」」

「だから、可愛いって。似合うよ。」

「!」

ただ、古市と仲良く話してんのがなんとなく気に入らなかっただけ。だからちょっと意地悪してみた。それは反省する、けど。なんでアイツ赤くなってんだよ。古市だぞ?

ていうか何だコレ。

なんで焦ってんの俺。

「ていうか、さ、」

古市は、まだヒルダの髪をつかんでいる俺と俺のほっぺをつねってるヒルダを交互に見比べる。

「なんだよ。」

「………ふたりって似てるね。」

「「似てないッ!!」」

「おぉ〜ハモった。似てる似てる。」

「「違うッ!!……!」」

「フンッ」

「けっ」


似た者同士は喧嘩をする!?
似てねぇって!!!



fin.





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