青色センチメンタル
―昼休み、
私、邦枝葵は勇気を出して、男鹿をお昼に誘った。いつも彼は古市くんと食べるらしいから、ふたりっきりじゃないけど。
それでも嬉しかった。
場所は屋上。
今日は晴れていて、お昼を食べるのには最適だと思う。
青々とした空が私の味方だった。
…今日はお弁当作ったんだもん!
ぎゅっとかばんを抱き締める。
…今日こそ
「男鹿っ…「坊っちゃまのミルクを届けにきたぞ。」
ふわりと宙から舞うかのように、さらりと金髪をなびかせ、ヒルダさんがやってきた。
それとともに紡がれかけた私の言葉は意味のないものとなった。
「お、悪いな。……俺の弁当は?」
「…………ない。」
「……………」
「フ…、冗談だ。」
「…ったく焦らせんなよっ………っと、なになに〜?」
『今日はヒルダちゃんが全部作ったのよ!あんたは幸せ者ね〜!うふっ
![](//img.mobilerz.net/img/j/4742.gif)
母より』
「うふっ
![](//img.mobilerz.net/img/j/4742.gif)
じゃねぇええ!!」
「む?」
「俺を殺す気かぁあ!!」
喧嘩するふたりを遠巻きに、なにがなんだか分からなくて、私は呆然と眺めていることしかできなかった。
ただ、日常化されつつある男鹿とヒルダさんの喧嘩…、否、じゃれあいを見ると……ちくり、と胸が痛んだ。
鞄にしまったお弁当も…意味のないものになるのかしら。
「あの……、」
「…ヒルダさんは魔界の料理しか作れないんです。」
戸惑う私に説明してくれたのは、苦笑いを浮かべる古市くんだった。
「魔界の、料理………。」
「それが想像を絶する味でして…」
「………見た目はおいしそうだけど?」
「そうなんスけどね…。」
どうしよう…
どうする………?
私……………
一度はしまい込んだ弁当を取り出す。
今日こそ、
今日こそちゃんと渡したい。
「えっと…あのっ、じゃっ、じゃあっ…。男鹿っ……私のでよかったら食べる?…………?」
見ると、男鹿は屋上のコンクリートに寝転んでいる。
その隣りにはヒルダさん。
「ほう…。食べないのではなかったのか?」
彼女の手には空になったばかりの弁当箱。
「るせー………。ただ腹が減ってただけだ。次はちょっとはマシなの作りやがれ。」
男鹿が自分の頭をヒルダさんの太腿に乗せれば、ヒルダさんは目を細め、男鹿の前髪を優しく撫でる。
「………努力する。」
敵わないと思った。
だって、ふたりにはふたりだけの、誰も立ち入ることのできない絆があるから。
「………古市くん、これあげる。」
「えっ!?マジっすか!?えっ!?」
お弁当を喜んでくれる古市くんを背に、私はその場を後にした。
「……ごちそうさま。」
羨ましいとか
嫉妬とか
それだけじゃなくて
そんなのが私の気持ちじゃなくて。
(まだ…好きでいていいよね。)
たとえ振り向いてくれなくたって
気付いてくれなくたって
私はあなたが好きです。
******************
ミロ様!
リクエスト
ありがとうございました(^^)
しおりを挿む
#novel数字_back#