捨てる神あらば、拾う神あり。 | ナノ
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 捨てられました 晴明side

晴明side

貴船からの帰り道。重い足取りで山を下りる。

脳裏に浮かぶのは、捨てられるのだと気付きながらも笑みを浮かべて手を振った、幼いながらに酷く聡い少女。

これからを悟り理不尽なそれを享受する彼女は、きっと賢すぎた。

双子は不吉。

真実はどうであれ、そう信じられている時代ではあったが、生まれてきた可愛い孫娘を死ぬと分かっていながら捨てることも、ましてや殺すことなど出来はしない。


結果、安倍家の小さな姫の存在を屋敷に留め、外から隠して育ててきた。

幸い、あまり我が儘を言わない子であったため今まではそれで何とかなっていたが、どこからか夕陽の存在は外に漏れてしまった。


帝や右大臣からの忠言を受けてしまえば、もう決断するしかなかった。

昌浩か、夕陽か。

どちらかを手放す。


「晴明……悔いているのか」

余程、暗い顔でもしていたのだろうか?
寡黙な神将が珍しくそう言葉を発した。
それに苦笑しつつも、晴明は首を横に振った。

「辛くはあるが悔いてはいない。昌浩は私にも騰蛇にも必要だった」


それではまるで、あの少女は必要ではなかったと言っているようだ、と六合が思考したことを晴明は知らない。

多くを語らない男はただ静かに「そうか」とだけ呟き、隠形する。



自分の言の意味に気付かないまま、晴明はただ重い足取りのまま帰路を辿るだけだった。





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