綱吉said


気がつけば深雪の部屋ではなく、全く知らないレンガ造りの町並みが並んでいた

活気はあるが行き交う人々の服を見れば、自分の知る人とは違った嗜好でどちらかといえば何世紀か昔の格好という感じだった。

俺はとりあえずここがどこであるのかを確認しようと近くを通った人に声をかけた



「あの、すみませんっ・・・・・・って、え?」



あろう事か人は自分をすり抜けた

俺は幽霊にでもなったのか?

それともこれはさっきの夢の続きだろうか

試しに何人かに触れようと試みたがすり抜けて、そして誰も俺に気づかなかった



「夢にしては現実味があるというか、地に足がついているというか」



なんともいえない感覚にどきどきしながらもあたりを散策することにした



「急に天気が悪くなったねぇ」

『そうですね、急いで帰らないと・・・・・・』



聞き覚えのある声だった

思い切り振り返れば、人の良さそうな顔をしたおばさんと話す深雪の姿があった。

同じように空を見上げれば、ただの曇り空とは言いがたいまがまがしい色をした空が広がっていた



「何だ?」



俺の中で警報音が響く

超直感だろうか。ここに居ては危険だといわんばかりに心臓の音は大きく早まった



「おい!あれ何だよ!!?」

「嫌!化物!!」



人々が怯えて指をさしたその先にはまだ距離が相当あるにも関わらず大きく存在感を放つ魔物がいた


怯えた人々は魔物とは反対側に逃げていく

人の波にのまれても俺の体はつられて流れることはなくただすり抜けていった。

そして目にとまった姿



「じょーちゃんなにしてる!早く逃げないと死ぬぞ!!」

『離して!私は行かなきゃいけないのっ!』



がタイのいい男の腕をふりほどき人の波に逆らって魔物へと向かっていく深雪だった



「深雪!!危ない!」



俺の伸ばした手は無残にもすり抜け深雪はただ駆けていく

俺の中でほぼ確信に近い考えがよぎる

これは深雪の過去ではないのか



俺は深雪の後を追って同じように塔にに上った



『Si prega di portare il crollo al male』

「イタリア語?」



確かに深雪の言葉はイタリア語だった

これまで話していたのは俺も知らない言葉だったにも関わらず、この言葉だけははっきりと聞こえた

そして理解できたのだ



深雪がその言葉を発したとたんあたりは光に包まれ俺の視界は暗転した   


   


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