過去



「深雪、もう起きてる?」

『はい!今開けますね』



こんこんと柔らかいノック音の後、綱吉さんの優しい声が聞えた

こんな朝早くから一体何だろうか

ついさっきまで夢で見ていた分、なんだか不思議な感じがした



「おはよう」

『おはようございます、どうされたんですか?』



ちょっと聞きたいことがあってね

なんて言いながら促した椅子に腰をかける綱吉さん

なんだかいつもよりも硬いような?



「実はさっきさ、夢に深雪が出てきて、、、」

『綱吉さんも?私もなんです』



まさか同じ夢を?

というかあれは本当に夢?



「小さい深雪とおばあさんがいて、深雪は笑ってた」



あぁ、きっと全く同じものを見たのだ

そして、暗闇から私を助けてくれたのはやっぱり綱吉さんだと思った

指輪のことを話そう



『あのっ、綱吉さん』



私が名前を呼んだ瞬間だった

くらりと眩暈がして視界が暗転した

最後に見えたのは同じように倒れる綱吉さんの姿だった




「あいつってさ、黒目黒髪だしおかしいよな」

「うちの母さんあいつには近づくなって」

「俺の父さんも、呪われるって」



小さいころ

年の近い友達なんて一人もいなかった

みんなの髪や目はきらきらと綺麗な色をしていたのに

私の色は黒く、闇のようだった



『どうして私はみんなと違うんだろう……』



そう思うといつも悲しくなって涙が出た

私が泣くと雨が降り

私が楽しそうに笑えば空は晴れ渡り虹が出た

私が怒れば嵐が吹き荒れ

私が悩めば霧が立ち込めた



そんな私のことをみんなこう言う



禍罪の子



「深雪は私の天使だよ、生まれてきてくれてありがとう」



ただ一人いつも優しく私の頭を撫ぜて抱きしめてくれる人がいた

その手はとても頑張る人の手というか、きれいなツルンとした手じゃなくて

しわしわでお世辞にもきれいとは言えないけれど

とても暖かい手だった



『私おばあちゃん大好き!』

「私も大好きだよ」



そう言って私のことを嫌わずにずっとそばにいてくれた

小さな村で、ただ一人の私の味方だった



そんな何気ない日常が、ある日突然私たちのもとから消えた




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