『……夢、なのかな?』



とても懐かしい

最後に見た景色とはまるで違う平和な世界

私の元いた世界が目の前に広がっていた



『『おばあちゃん!』』

「「あら、深雪 そんなに泥まみれになって」」



私の目の前を通り過ぎた少女はかつての私だった

これは、私の子供のころの記憶だろうか

私の姿はどうやら誰にも見えていないらしい



『『ふふんっ、見てこれ!』』

「「おや、あんた掘り返してきたのかい?」」



握っていた手を広げて見せれば

その掌には指輪が握られていた

あれはそう、たまたま先端が土から出ていて

きらきらと光るそれがとても気になって思わず掘り返したのだった

祖母はこの時からこれが誰のものか知っていて

そして、どうして土の中に埋めたのかも知っていて

本来の持ち主が私であることも知っていたといまさらながらに思う



「「深雪、よく聞きなさい それは絶対なくさないように毎日首から下げていなさい  大人になってその指輪が指にはまるようになったらつけなさい」」

『『うん!分った、大事にするね!』』



そう言ってにこにこと笑う私の頭を切なそうになぜる祖母

あぁ、おばあちゃん

きっと指輪はもう私の指にちゃんとはまるよ

でも何故かその指輪を付けるのが怖いよ

何かが変わってしまいそうで

いや、もうだいぶと変わってしまっているのだけれど

それでもやっぱり思うのだ



『寂しいよ……』



異端分子のこの自分を愛してくれた

優しさを知り、愛をしり、許す心を知った

教えてくれたのはおばあちゃんや周りの優しいおじさんやおばさんだった

あれから、あの世界は再び平和になったのだろうか?

みんな無事なのかな?

おばあちゃんは寂しがっていないだろうか

一緒にいてほしいのは私の方だけど、やっぱり心配な訳で

この世界でも、ちょっと変だけど助けてくれたピエロ

まだあまり知らないけど優しいボンゴレのみなさん

私はとても幸せ者だと思う



にこにこと他愛のない会話をする過去の私の姿を見て

とても不安になる私がいた

どうか、私のことなど忘れてみんなが幸せでありますように



少しずつ世界が遠ざかっていく

そろそろ目が覚めるのだろうか

そう思えば次は真っ暗で冷たくて前も後ろも右も左もわからない世界



『え……や、やだっ』



怖い、怖い

助けて



どうしようもなく怖くて、寂しくて

ただただ手を伸ばした



「深雪」

『つな、よしさん……?』



光が目の前に広がって

綱吉さんに名前を呼ばれた気がした

思わずその暖かな光に飛び込んで

私の意識は一気に浮上する



『……っ、夢』



最後は何とも恐ろしい

でもどこか暖かい

ふといつも首からかけている指輪に触れる

特に装飾はないが家紋のような紋章が中央に描かれている



『起きよう』



まだはっきりと覚えている夢

ただ何故か心が軽くて

ウキウキした気分で服を着替えた



今日も私の一日が始まる


  

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