仕事2

『あの、綱吉さん』

「どうしたの?」



夕食を食べ終えて

外は暗く、月が昇っていた



『外出許可を頂きに来ました』

「あぁ、そっか いいよ、気を付けてね」

『はい、ありがとうございます』



少し困ったようにしかたないなと言って綱吉さんは優しく笑った



「いってらっしゃい」

『……っ、いってきます!』



自分の居場所なんて

そう思っていた

ここも所詮身を泊めるだけ

そう思っていたの

異端分子の私を受け入れてくれる綱吉さんに胸が苦しくなった



屋敷の外へと出て、はぁと1つ息を吐く

「幸せが逃げますよ」

『……いつも突然すぎない?』



ひょっこりと現れたピエロ

なぜいつも背後に立ってるんだ……



「さあ、仕事をしていただきますよ」

『一体何をどうするのさ』



どうやら元世界と余り変わらないようで

魔物のような物を消すらしい

力は元の魔法も、ピエロに貰ったものもどちらも使える



家々の屋根を跳び、それらしいものを探す



『うーん……』



これは探し出すようなものなのだろうか

そんなことを考えながら不意に入った路地裏

先ほどまでとは違う異様な空気に違和感を覚えた

けれども何が起こるというわけでもなく

私はそのまま奥へと足を進めた



ピタリ



足をとめた私の口から出たのはため息

『はぁ……まったくもって隠せていないわ』



くるりと180度向きを変えれば目の前には

人と呼ぶには随分形の崩れたゾンビのようなものがそこにはいた



内心私もびっくりだ

まさかこの世界の魔物はこんなにもグロテスクだなんて思わないもの

思わず一歩下がる私

でも逃げるにはいかない



『万物よ、我が力となれ』



私の周りにふわりと風が吹く

柔らかい風とは対照的に私の目は何も映さない

凍った様な冷たい視線



魔物はどこから集まってきたのか

私を囲むように軽く30体はいるであろう



『さっさと終わらせて帰ろう』



怪しく目が光れば

先ほどとは打って変わり冷やかな空気が辺りを包んだ



『aqua』



唱えれば、空気中の水分が集まり剣となった

辺りの空気が震えるように体にべたりとまとわりつく

あぁ、どこか懐かしくて

とても心地いい



勢いよく地を蹴り出して瞬時に魔物たちを切り倒していく

まるで舞を踊るかのようなその姿

あっという間に方が付いた



『は、はっ、終わった』



乱れた呼吸を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をする

先ほどまで高鳴っていた鼓動も今では落ち着いて

なんだか少し物足りなさまで感じてしまった

自分が怖いと思いながらも

あぁ、これが己の世界ならと何度も思った


こんな日が、一体いつまで続くんだろう

そもそも元いた世界には戻れるのだろうか

何も考えていなかったと

そうとうきてるなんて自重した

  



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