オッドアイ




『……朝』



昨日なんだかんだで寝てしまって気付けば朝になっていた

相変わらず一人部屋にしては広い空間に、白を基調とした部屋

変わったことといえば、机の上に服が置いてあることぐらいだ



“美しい我が主へ”



『ピエロか……』


服の上には一枚のカードが置いてあった

おそらくピエロであろうと推測し

もぞもぞと服を着替える



無一文で、服もお金も何も持ち合わせていないから

少し嬉しかったりもする



時計は朝の5時を指していて、元の世界での習慣が染みついていると思わず実感した



『仕事はどうすればいいんだろう?』



仕事の内容は聞いたけど、まずどうすればいいのやら

とりあえず廊下に出て歩いていると

数人のメイドさんたちが朝から掃除であろう、モップがけをしていた

手は止まっており、なんだかひそひそと話している

どうせ私のことであろう、みんなこぞってこっちを見ている



『おはようございます』

「「「「おはようございますっ」」」」



にこやかにあくまでも優しい笑みを浮かべ挨拶をすれば

少し焦ったように声が返ってくる

そのまま横を通り過ぎれば後ろでまたひそひそと話していた



「誰かの愛人じゃないの?」

「昨日、ボスと手をつないで歩くのを見たわ」

「あの愛人を一人もおつくりにならないボスが?」

「一体どんな汚い手を使ったのかしら」

「身分が高いのかしらね」

「私たちだってメイドになってまで頑張ってるのに」



なーんて、全部まる聞こえですよ

そんなこと言わないけど

でも、心外だ

なんで私が愛人なんかやらなきゃいけないのよ

絶対に嫌

てか、初対面で無理があるし

何にも知らないからこんなことが言えるんだろうなろうなぁ



『はぁ、こっちでも仲良くなれる人はいなさそう』



小さくつぶやいた言葉は空気にまぎれて静かに消えた

しばらく歩いていると前から人が歩いてきた



「おや?見ない顔ですね」

『はじめまして、分け合ってここに住まわせていただくことになりました櫻井深雪と申します』

「あぁ、沢田綱吉が言っていた……」



どうやら沢田さんが事前に話してくれていたらしい

彼もまた、オッドアイで目に文字まで刻まれている

彼も何かと契約を?

契約が全て目とは限らないか……



「六道骸といいます、かかわることは無いでしょうが名前ぐらいは教えておきましょう」

『ありがとうございます』

「出会ったついでに、1つ忠告しておきますが」

『何でしょうか?』



そのまま去ろうとした六道さんはくるりと向きを変えて再び私のもとへと近づいてきた

ずいっと顔を寄せられて

思わずびっくりしてしまった



「ここのメイドには気を付けることです」

『そうですね、ご忠告ありがとうございます』



どうやら見なさん気付いているようだ

はたまたこの人だけだろうか?

それだけ言うとすたすたと去ってしまった

無愛想な感じだけど、寝は優しいのだろうか



『あ、そうだ執務室に行くんだった』



数分そこで立ち止まっていたものの

また歩き出した

  

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