新たに



『ここは……?』



ふと目を開けると自分がさっきまで見ていた世界が消え、全く別の場所のようだった

だがそこは、銃声と悲鳴が響き渡り

とても平和だとは言えなかった



『私は、一体……』

「キミは自分の世界と引き換えに、あの魔法で街を救ったのです」

『誰っ!?』



この場には不釣り合いなピエロの格好をした男

心の読めない不気味な微笑みを崩さぬまま、座り込んでいる私に手を差し伸べた



「ワタクシはワタクシです」

『意味が分からない、あなたは何を知ってるの?』

『ワタクシはただのピエロですが、あなたのお役にきっと立てるでしょう』



だから、契約しませんか?




『話の意図が見えないけれど』

「キミは早死したいのですか?」



銃声は一向になりやまない中

偶然に弾が1つ私の方へ向かってきていた

やけにスローに感じるが、自分の体も動かない



「ここで死ぬのですか?」

『まだ……まだ死ねない!』



契約成立です



ニコリ

今度はピエロがほんとに笑ったように思った

怪しげにピエロの目が光ったら、私の目にも激痛が走った

でも銃弾が当たったわけじゃない

銃弾は何故か私には当たらず叩き落されたかのように下に落ちた

目の痛みが引く頃にはピエロが消えていて、ポツリと未だに銃弾の鳴り響く世界に一人でいた

どこに来たのか全く分からないし

これが夢か現実かもわからない

ただ、今自分にできることをして、生き延びよう

そしてここで、新たに生きてく



パチン



指を鳴らせば

銃を持っていた人々が何だ何だと一斉に騒ぎ出した

さっきまでとはまた違ったうるささで

そして何より悲鳴をあげ、逃げ惑う人達も驚きを隠せず思わず足が止まった



ポンポンと銃が1輪の花に変わっていき

地面からも草が生え、何処からともなく花びらが散ってきた



ふわふわとした感覚が体中を襲い

目を閉じる瞬間、黒いスーツを着た男が私のほうへ駆けてきている気がした





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