お風呂を済ませて気持ちもだいぶ楽になった。
ふー、やっぱり入浴タイムは大切だね!
新しいパジャマに着替えて、ついでにたまった洗濯物を整理する。
ちょっと動いただけでふらっとしたので、今日はバイトも休みかな、と思いながら部屋に戻ると、天と目が合った。
「まだいるし」
ここはあなたの家じゃないんですよ!
と思いつつ、もう話かけないと心に誓ったので、無言でベッドに向かう。
そのままベッドに入ろうとすると、急に後ろから腕を引っ張られて、気が付いたらベッドの上だった。
「!ちょっと」
押し倒された、と気が付いた瞬間に、膝を立てて天との距離をとる。
「ガードが固い」
「当たり前でしょ」
わたしの足をどけようとする天と、意地でもどけるもんかと力を入れるわたし。
「興味ないんじゃなかったの」
「お風呂上りはさすがにね」
なにが、さすがに、だ。病人に手を出そうとするなんて信じられない。
「熱上がるからどいて」
「熱があるんだからおとなしくしてて」
お互いに一歩も引かなかった。
心臓の音がうるさい。
天の? わたしの?
どっちだろう。
「天」
彼の名前を呼んで、右手で彼の首筋を撫でる。
天が目を丸くしたのを見て、かわいいなと思った。
「……帰る」
さっきまでの勢いはどこへやら、天はベッドから降りて荷物をまとめ始めた。
いつもの仕返しだ、と思って、彼の後姿に声をかける。
「耳赤くない?」
「黙って」
大きな音を立ててドアが閉まる。
意外とピュアだなあ。
わたしも人のことなんていえないけど。
机には、天が作った朝食が置いてあった。オムレツおいしそう。
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