朝目が覚めたとき、部屋に天がいた。
あれ?
昨日、合鍵を渡してから帰ってもらったはずなんだけど。
どういうことだ。
「天くん?」
「名前、おはよう」
いや、おはようじゃなくて。
「あなたさっそく合鍵使いました?」
「朝ごはん食べられる?」
会話が成り立たない!!
「ちょっと、合鍵返せ」
「しばらく貸してくれるんでしょ」
昨日の涙目はどこへやら、天はいつものえらそうな態度だった。
あれは演技だったのか!?
くそ、騙された。
「まだ体調悪いんじゃない? 今日も大学休みなよ」
「じゃあ、天もお仕事行ったら? 朝ごはん作ってる場合じゃないよね」
「今日は午後からなのでまだ時間があります」
なんだと。
昼まで居座るつもりか、こいつ。
「学校行ってくる。天に看病されるなんて御免だ」
「待って」
腹が立ってきてベッドから起き上がると、天がそれを制した。
おでこに手を当てられる。天の手が冷たい。いや、わたしが熱あるのかな。
「まだ熱あるでしょ。寝てて」
「だれのせいで熱がでたと思ってるんだ」
文句を言ってみたけれど、確かに体がまだまだふわふわしているので、彼のいうとおりおとなしくベッドに戻った。
それはそうと、お風呂に入りたい。
昨日はほとんど寝てたからお風呂に入ってないし、熱で汗をかいてすごく気持ち悪い。この不快感だけでさらに体調が悪化しそうだ。
でも、合鍵を持ったアイドルが居座っているせいで、簡単には動けそうになかった。
なにをされるかわかったもんじゃない。
「天さん、わたしお風呂に入りたいんだけど」
「入ったら?」
返事がそっけなくてちょっといらっとする。
わたしもわりとわがままかもしれない。
「のぞかないでね」
「自意識過剰なの? 大丈夫、興味ないから」
「そうかい」
もう絶対話しかけないと心に誓った。
着替えとバスタオルを用意して部屋をでようとすると、天から一言。
「すべって怪我しないようにね」
優しさが逆にうざいんだけど。
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