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「わかった。傘貸して」


やっと天が荷物をまとめ始めたので(嫌々だけど)、わたしは玄関で彼に貸す傘を探した。と言っても、たくさん持っているわけではないので、貸せるものも限られてくる。


「はい」


見つかった傘を天に渡すと、彼は目に見えるぐらい嫌そうな顔をした。


「もっとましなやつないの」


わたしが天に渡したのは、ピンク色のフリルがたくさんついたかわいらしい傘だった。
高校時代に衝動買いしたのはいいけど、結局使ってなかったんだよね。


「ないよ。それが一番ましだよ」


本当にましなのはわたしが使うんで。


「目立ってファンにバレる」
「大丈夫だよ。悪目立ちしてだれも天のことなんて見ないから」


無理やり傘を押し付けると、天は深いため息をついて靴を履きだした。
え、受け取るんだ?
渡したのはわたしだけど、まさかほんとに受け取るとは。


「……またね」


天はいつもの不機嫌な感じでそれだけ言い残して出ていった。
まだ来る気あるんだ、と思いながら、手を振って見送ってあげた。


「やっと帰った」


……無駄に疲れたな。