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ベッドの上で壁に背中を預けて、この前買った小説を読む。


「天さん」
「なに?」


ここはわたしの家なんだけど、当たり前のように天がいた。
帰る家間違えてない?


「天は家出でもしたの」
「いまは一人暮らしだよ」


いまはってなんだ。


「だったら自分の家でのんびりしたら?」


机に台本っぽいものを広げてなにやら作業をしている天に声をかける。


「迷惑だっていいたいの?」
「よくわかってらっしゃる」


自覚があるなら家に帰りましょう。わたしはいま読書中なんだ。


「名前はボクと出会った時のこと、覚えてる?」
「え」


突然の質問に、ぎくっとする。思わず読んでいた小説を閉じてしまった。どこまで読んだっけ。


「あー、なんか頭痛いな。二日酔いかな」


天と出会った時のことを思い出そうとするといつも頭が痛くなるんだよね。どうしてかな。


「未成年だよね、名前」
「そうだった」


まだ十八歳だったわ、忘れてたよ。


「ごめん、よく覚えてない。とりあえずいらいらしてたことは覚えてるけど」
「そう」


正直に話すと、天は横目でわたしをじっと見つめてから静かに頷いた。


「いいよ、読書の続きして」


わたしが固まってしまったせいか、天が読書を再開するように促してくる。

いやでもさ。
あなたがいると、集中できないんですが……