普通に買い物をしている天が、まさかアイドルだなんてだれも思っていない。
実は天と初めて会ったとき、わたしは彼がアイドルだなんて知らなかった。
TRIGGERの名前すら、聞いたことあるような……?レベルで、九条天を目にしたときも、隣にいた友達が騒いでいるのを見てそんなに騒ぎ立てることか?と疑問に思ったくらいだ。
「なにか買うの?」
天を観察していると、まっすぐ彼がこちらにやってきた。
「うん、これだけ買ってくる」
わたしは手に持った文庫本三冊を彼に見せる。テレビをあまり見ない代わりに、小説はよく読むんだ。一人で物語に夢中になっているほうが、わたしにはぴったりだ。
「財布大丈夫?」
奢らせておいていまさらそんなこと聞くか。
「ご心配なく」
「よく考えたら学生だったよね」
もっと早く考えてよ……
「もう帰るだけでしょ?」
「アイス食べたい」
子供か!
財布の心配したのってまさか。
「アイスはボクが奢ってあげる」
「それはどうも!」
優しいのか冷たいのかよくわからない彼の行動に、わたしは振り回されるしかないようだ。
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