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「だれだ、あいつ」
「ほら、プロデュース科の」
「転校生?」
「学校来てないほうのな」


苦しい。帰りたい。下を向いて廊下を歩く。ここまで来た自分を盛大に褒めてあげたい。

結局、学校を辞めるためには学校に登校しないといけないわけで。学校に通いたくないから辞めたいのに、もうどうなっているんだろう。

おまけに無視しても聞こえてくる話し声が耳を集中攻撃してくる。どんな噂をされているのかだいたい予想はつく。

わたしが休んでいる間に、同時期に転校してきたもう一人の女の子は、学院を救ったとかで有名人になっているみたいだし。わたしも違う意味で話題になっているけど。


さて、問題の教室についたけど、前回のことを思いだして手が止まる。
登校時間だから廊下も人であふれているし、こんなところに立ち止まってる場合じゃないのに。

そうだ、前回は前から入ったからいけなかったんだ。
慌てて後ろのドアに移動し、ドアに手をかける。

心の準備なんてできてないけど、深呼吸をしてドアを開けた。


「…………」


やっぱり視線があちこちから飛んでくる。
しかもなぜか身構えられてるし。わたしがなにか言い出さないか、警戒してるみたい。
怯えたいのはわたしのほうだよ。

そういえばわたしの席はどこなんだろう。なにも聞いてないからわからない。昨日会った眼鏡の先生に聞いておけばよかった。

朝だから空いてる席がちらほらあるし、この中から自分の席を当てるのは相当難易度が高い。でも声なんてかけられないし、まず声がだせない。いま口を開いたら心臓を吐き出す自信ある。


「あら、おはよう♪あなたの席はあそこよォ」
「……!」


すると、登校してきたクラスメートの一人がごく自然な流れで声をかけてきた。
驚きすぎて思わず数センチ飛び上がってしまい、恥ずかしくなる。

ちらっと見た彼の顔はとても整っていた。アイドル科、だもんね、ここ。でもなんかちょっと個性的な空気を感じたけど。
お礼を言う暇もなく、声をかけてくれた人は自分の席に行ってしまった。

とりあえず自分の席がわかったのでぎこちない足取りでそこに向かう。
ずっと入り口に突っ立ってるのもつらいし。歩き出したら歩き出したで視線が痛いけど。わたし、べつに殴りかかったりしないよ……?


そのあと席についてからお昼になるまで、わたしは自分の席を立たなかった。

男子しかいない教室って、こんな感じなんだ。このクラスだけなのかわからないけど、授業中も騒がしくて、落ち着かないんだけど。

しかも授業の内容は普通と違いすぎて理解する前にどんどん先に進んでいくし。

だいぶ遅刻して登校してきた隣の席の男の子は、席につくなり眠ってしまった。
なんでもありなんだ、この学校。


でもやっぱり1日この空間で過ごす勇気はなくて、お昼休みになるとともに家に帰った。
一日一回教室に顔を見せればいいんだ。約束は破っていない。