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それにしても、髪に触れられるのって心地いいな。彼の触り方が丁寧だからなのかもしれない。


「はい、できた♪」
「ありがとうございます……」


前髪を上げられたせいで視界が広くなって落ち着かないんだけど。前を見てなくてこんなことになったわけだし、ちょうどいいのかな。なんか、防御壁を失ったみたいで、自然と視線が泳ぐ。

しかし、前髪のことを気にしている余裕もなく……


「ちょっとぉ、あんたはいつまでここにいるつもり?話したいことがあって集まったっていうのに、なかなか本題に入れないんだけどぉ?」


不機嫌極まりないといった感じで急に声をかけられて、思わず身を引く。陰でこそこそ噂をされるのも嫌だけど、面と向かって強く言われるのも苦手。

しかも相手は先輩だ。この人絶対こわい。

そもそも部外者のわたしが長居してるのが悪いんだ。


「すみません。すぐ、帰ります」


荷物をまとめようとしたが、退学レポートは凛月が乾かしている途中で持って帰れそうにない。でも、あと二日で夏休みに入るし。

一人で脳内会議を開いていると、凛月と目が合った。


「『これ』は俺に任せて。今度会ったら渡すから」
「……ありがとう」


ちょっと戸惑いつつもぺこっとお辞儀をする。

この流れでジャージのこともお礼を言わないと。後輩とはいえ、やっぱり知らない人に自分から話しかけるのって緊張してしまう。でも何も言わずに借りて帰るなんて、失礼だ。


「ジャージ、ありがとうございます。洗って返します」


言ってから気づいたけど、いつどこで返せばいいんだろう。これから夏休みだし、彼は一年生だし、わたしには難易度が高いような。


「いえ、気にしないでください。しばらく使わないのでゆっくりで大丈夫です」


笑顔が返ってきた。
ゆっくり、って……日が経つとそれはそれでハードルが上がる。

なんてことを考えつつ、これ以上邪魔にならないうちに帰ったほうがよさそうだ。


「……失礼しました」


小さく頭を下げて、今度こそは扉を静かに閉めた。

そういえば結局あの人たちは誰だったんだろう。凛月以外名前も知らないし、なんの集まりなのかもわからない。

夏休み前なのに、わたしの心はぜんぜん楽しい気分になれなかった。