泣いたら楽になるって本当だったんだ。だれかがそんなこと言ってたけど、信じていなかった。泣いたって体内の水分量が減るだけで心には影響しないって思ってた。
でも、流した涙の分だけ、少し心が軽くなった気がする。
あれから教室に足を運ぶのも少し億劫じゃなくなった。
そういえばもうすぐ夏休みだ。
わたしの戦いはこの長期休みを挟んだ延長戦になってしまう。早く辞めたかったけど。
最後の夏休みぐらい家でのんびりしてもいいかもしれない。
学校を辞めてしまったらただのニートになってしまうわけだし。
授業が終わって、周りのクラスメートが少なくなったところでわたしは席を立った。
今日は凛月も早々に教室を出ていって、もういない。
夏休みはみんな忙しいのかな。
今日は職員室に用があるので、帰る前に寄ってみたものの探している人物はそこにいなかった。退学レポートの途中経過を先生に見てもらおうと思ったのに。
確か椚先生……だった気がする。わたしに紙の束を押し付けた眼鏡の教師だ。あとで知ったんだけど、どうやら生徒指導担当らしい。だからわたしを指導しに来てたんだ。
椚先生は生徒会室か校内のどこかにいるとのことだったけど、生徒会室に行く勇気なんてあるわけないし、『校内のどこか』ってもう範囲が限られていない。
でも、学校の中を歩くのはちょっとした運動になりそうだ。
考えてみればここに来てから2年B組の教室と職員室にしか足を運んでないし。
ということでプチ探検隊が決行された。
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