リオを幼稚園まで送って帰ってきたレオくん。今日は午後からお仕事が入ってるそうだ。それまで二人きり。
わたしはリビングのソファに座って昨日の洗濯物をたたむ。
レオくんは机の上に五線譜を広げてなにかを書いていた。
そういえば、昨日からリオのこと任せきりだったから、お仕事進んでないのかも。
「レオくん、いろいろとありがとう。全部お願いしちゃってごめんね」
「気にするな!名前になにかあったら、おれが困るからさ」
すごく真面目な顔で言われて、心臓がどきっとした。急に、二人きりのこの空間に落ち着かなくなるわたし。
話題を変えよう。
「そうだ。リオがランドセル見に行きたいって。今度の休みに行ける?」
「おお!そっか!リオも来年から小学生なんだなー!早いな!」
ほんとに早いよね。今年でリオも六歳になるし、彼女が生まれてからもう六年経つんだ。
学生時代が懐かしい。『みんな』とはたまに顔を合わせるから、寂しくはないんだけど。
「名前」
そんなことを考えていると、レオくんに名前を呼ばれる。いつもより低い彼の声に、昨日のことを思いだした。熱は下がったはずなのに、顔が熱い。
「お、お昼の用意はわたしがするから!レオくん、今日は午後からでしょ?」
「うん。どっか食べに行くか?あ、まだ病み上がりだもんな。無理はしないほうがいいし」
「そうだね」
なんで今更こんなに緊張してるの!?
レオくんに振り回されることはよくあるのに、こういう意味でドキドキするのは初めてだ。調子が狂う。
体調を崩したおかげで、レオくんの意外な一面を見ることができたけど、これから先がさらに不安になったのでした。
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