「ひな祭り〜かわいいリオのひな祭り〜♪」
「パパといっしょにひなまつり〜♪」
楽しそうに歌う二人の声。
もうすぐひな祭りです。
我が家にもお姫さまが一人いるので、お祝いします。
「パパ!さんにんかんじょはそこじゃないよ!」
「あれ、違ったか!?」
「ちがう!リオのひなにんぎょうだからちゃんとして!」
なぜか争いが起こっているけど。こらこら、二人とも仲良く準備してね。
それにしても立派なお雛様だ。
「7段もあると大変だな」
「英智くんに言ってよ」
リビングのスペースを占領しているこの大きくて立派なお雛様は、レオくんが買ったわけでも、わたしたちの両親が買ってくれたわけでもない。
リオが生まれた年のひな祭りに、天祥院家から届いたものだ。
送り主の英智くん曰く。
『月永くんと名前の娘さんなら、僕の孫も同然だしね』
というわけのわからない理由つき。
「おれが買ってやりたかったのに……」
そして毎年レオくんはふてくされている。リオは喜んでるから気にしなくていいよ。だれが買ってくれたとかより、パパとお雛様をかざれるのが一番嬉しいと思うし。
「ママ!おひなさまかざって!」
「わたしが置くの?」
主役のお雛様を指差してリオがわたしを手招きした。高さ的にリオには無理だろうけど、レオくんと作業をしていたのに、わざわざわたしに話が飛んでくるとは思っていなかった。
「うん!おひなさまはママがかざるの!」
「了解」
では、主役を飾りますか。
お雛様を飾ると、7段の立派な雛人形が完成した。レオくんはちょっと疲れ気味。
「できた!リオのおひなさま!おだいりさまとおひなさまは、パパとママだよ!」
「え」
「いつもふたりいっしょだから!」
な、なるほど。だからお雛様を飾るのはわたしの当番だったのね。
「わははは☆リオは天才だな♪」
「うん!てんさい!だって、パパとママのこどもだもん!」
リオはレオくんの機嫌をとるのが上手になったね。まあ、わたしも嬉しい、けどね、うん。照れてるわけじゃない。
「よし、名前も一緒に歌うぞ!」
「ママもいっしょ〜!」
「はいはい」
今年もこの二人と仲良く過ごします。
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