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「凛月、いまからこっちに来ちゃだめ。絶対のぞかないで」


え?
名前が謎の言葉を残してキッチンに駆けていく。
なに?鶴の恩返し?
絶対のぞかないで、なんて言われたら、逆にのぞきたくて仕方ないんだけど。


「料理するの?」
「来ちゃだめ」


名前の言葉を無視してキッチンに行くと、彼女は頬を膨らませて怒った。
エプロン姿も珍しくて可愛い。

じゃなくて。


「包丁の持ち方おかしくない?」
「おかしくない」


名前の手にはいつも俺が使ってる包丁が握りしめられてるんだけど。
包丁ってそんな危険な持ち方するものなの?
とてもじゃないけど料理が始まるとは思えない。


「凛月はあっちで寝てて」


戦に向かう戦士みたいな顔をして俺を追い払おうとする名前。
いや、でもそんな危うい包丁の構え方を見ておとなしく引き下がれるほど俺は呑気な彼氏じゃない。目も覚めたし。

そうこうしている間に名前が玉ねぎに包丁を振り落とそうとする。


「待った……!危ないから……俺が切るから貸して」
「やだ」


慌てて名前のもとに駆け寄ったものの、名前は首を横に振った。
やだ、じゃなくて。おとなしく俺のいうこと聞いて。ほんとにこわいから。普通に冷や汗しかでてこない。


「じゃあ一緒に作ろ?そのほうが俺も安心だし」


頑なに包丁を手放さない名前を見兼ねて提案すると、名前は急に肩を落として俯いてしまった。呆然と包丁を持って立ち尽くす姿は、ちょっとホラーだ。


「……凛月の誕生日なのに」


ああ……そういうこと。

急に料理を始めるから何事かと思ったけど、そういえば今日は俺の誕生日だった。
だから俺が手伝ったらだめなの?一人でしたいって?

でも誕生日に名前が怪我をしたら、そのほうが嬉しくない。
俺は名前と一緒に過ごせるだけで幸せなんだから。


「俺は名前と一緒に料理できたら嬉しいよ。名前は嫌なの?」


隣に立って聞いてみると、名前はしばらく無言で考えたあと、静かに包丁をまな板の上に置いた。彼女の手から刃物が離れたのを見てちょっと安心する。強盗を説得した警察官みたいな気分。


「……凛月、教えて」


控えめに返って来た言葉に思わず笑顔になる。


「いいよ〜♪」


ところで何を作るの?