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自分から何かしたいどこかに行きたいってアピールをしてこない名前が、今日は珍しくちょっと機嫌の良さそうな顔で俺のところにやってきた。


「映画、観に行きたい」


映画ねぇ。まあ映画館なら暗くて座ってるだけでいいし楽かも。ちなみにそれってデートってことでいいんだよね。名前から誘ってくるなんて貴重だな〜。






「まだ始まってないんだけど」


映画館に着いてチケットを買ったあと、映画が始まるまでに時間があったので名前にポップコーンを買ってあげた。それからまだ五分も経ってないはずなのに、いつの間にかポップコーンの半分が減っている。


「お腹すいた」


Lサイズのポップコーンを両手で抱きしめて嬉しそうにもぐもぐしながら名前が呟いた。はいはい、ごめんね。気づかなくて。もうすぐお昼だったね。いいよ、好きなだけ食べて。


「そういえば今日観る映画ってなんだっけ」


名前が観たい映画があるっていうからチケットも彼女に任せたんだけど、何を観るか聞いてない。もしかして最近CMでやってる恋愛映画?デートだもんねぇ。名前もやっぱり女の子だったんだ〜。






『キャーッ!』
「…………」


まさかのホラー映画だった。

え、こういうときって普通もっと雰囲気のある映画とか観るんじゃないの。なにが普通かなんて俺にもよくわからないけど、ホラー映画って……。デートだよね、これ。しかもすごくつまんないし。こんな作り物に怯えろってほうが難しい。

終わる頃に起きよ〜と思って目をつぶりかけたとき、隣から何かに腕を掴まれる。観ている映画が映画なだけに一瞬ひやっとした。隣に座ってるの、名前しかいないんだけど。どうしたの?


「…………りつ」


小さく名前を呼ばれた気がして、そっと隣をうかがうと、ちょっと涙目になって震えている名前が目に入った。……怖がってる。いつだったか「幽霊なんて怖くない」とかいってたくせにやっぱり怖いんだ。ふふ、なんか可愛い。

寝るつもりだったのを急遽取りやめて、名前が怯える姿を楽しむ時間にすることにした。たまにはこういうのもいいねぇ。





「こわかったの?」


映画が終わってからこっそり聞いてみる。


「こわくない」


いつもの無表情でそんなことをいってきたけど、そのわりに自分から手を繋いできてそのまま離さないのはなんでだろ。いつもは手を繋ぐの嫌がるくせに。


「こわかったんでしょ」
「こわくない」
「こわかったんだ〜」
「こわくない」


ちょっと面白くなってそのあともずっとからかい続けたらとうとう拳が飛んできて危うく俺の顔に穴が開くところだった。俺にとっては名前のほうが怖いんだけど。





その晩。


「……凛月、一緒に寝て……?」
「いいよ〜」


やっぱり可愛い。