全速力で教室から遠ざかる。もうどこを走っているのかよくわからない。
また同じことの繰り返しだ。何回あそこから逃げ出すんだろう。
教室のドア、大丈夫かな。
なんて心配している場合じゃないのに。
廊下を走って、階段を駆け下りて、よくわからないままとにかく走って、行き止まりでやっと立ち止まった。これ以上、どこにも行けない。
息を整えて床に座り込む。校舎が無駄に広いせいで余計に落ち着かない。
どうしてわたしはみんなと同じように生きられないんだろう。
やっぱりわたしはおかしいんだ。家に閉じこもって一人で生きているほうがよっぽど似合ってる。
小さいころは笑って過ごせたのに。あのころは何も知らなかったから。
なにが自分に合っていて、合わないか。それは諦めたほうがいい、このほうがわたしらしい。
そんな風に、一つ一つ現実を享受して、代わりに、一つ一つ自分を殺していった。
手に入れるのは自分を縛るものだけで。このままいけばきっとなにも残らない。なにかを残してくれる人もわたしには、いない。
「こんなところにいた」
「…………!」
だれもいないはずの廊下にわたし以外の声が響く。
油断していた。
突然のことに驚いて、わたしは座り込んだまま肩を上下させた。
顔を上げると、なぜか隣の席の男の子が立っていた。
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