※退学レポートのヒロイン設定です。
「どうしたの、名前」
名前は昔からすぐ泣くけど、今日はいつもと様子が違った。帰宅しても元気がないし、話しかけても反応が薄いし、おまけに夕飯を食べ始めた瞬間に静かに泣き始めた。一瞬俺の作ったオムライスのせいかと思ったけど違うみたい。
「……なんでもない」
自然と溢れ出したものなのか、名前も自分の涙に混乱していた。仕事で何かあったのかな。
結婚するまで働く、なんて言うから何も言わずに応援してあげてるけど。
「美味しくなかった?」
「おいしい」
涙声でそんなことを言う。おいしいって……全然味わってないでしょ。
普段から感情が薄いせいで違いがわかりずらいけど、ずっと一緒にいる俺ならわかる。
「何かあったでしょ……仕事〜?」
「…………」
何も言わないところを見ると図星かなぁ。
スプーンを持ったまま動かなくなった名前を見つめる。
「辞める?」
はっきり言いすぎたかな、と思ったけど、名前にはこれくらいシンプルに言った方がいい。
変に気を遣って曖昧なことを言うと、あれこれ余計なことまで考えてまた一人で空回りしちゃうから。
「やだ」
しかし、意外にも名前は首を振った。余計に涙の量が増えてる気がするけど。
「いいよ、俺は。名前のことちゃんと面倒見てあげられるし。掃除とか洗濯なら名前もできるでしょ?家にいてくれたほうが俺は助かるけど」
それでも名前は首を横に振った。どうしても嫌らしい。
もしかして、俺と結婚するのも嫌ってこと?
「諦めたくない」
名前が泣きながら話し出したので、おとなしく聞く。
「学校も、途中で飽きめなかった。凛月がいてくれたから……凛月、わたしが働き始めたとき、がんばってって、言ってくれたの、嬉しかった」
名前が目元を拭う。
「凛月が応援してくれたから、がんばりたい」
言い終わると、満足したのかそのまま俯く。
あ〜、もう。そんなこと言われたら、応援するしかないじゃん。凛月、凛月って、俺のことを頼ってくれる名前が好き。放っておけなくてついつい世話を焼いちゃうくらい。
「そっか〜。じゃあ、がんばろ。俺も料理がんばるね」
「うん。おいしい」
「ありがと〜……♪」
名前がもぐもぐ静かに味わっているのを見つめる。ハムスターみたいで可愛い。
ずっと応援してあげるから二人でがんばろうね。
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