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今日もKnightsのレッスンに付き添うためスタジオに足を運んだ。わたしのすることなんて、みんなのレッスン風景を眺めることぐらいなんだけど。

今日はプロデュース課の彼女も来ているし、余計にわたしの出番はなさそう。


「え〜……ちょっとぐらいいいじゃん」


視界の隅で凛月が駄々をこねて彼女を困らせている。文句を言うわりに、その横顔は楽しそうでちょっと寂しくなった。わたしと一緒にいるときは、いつも不機嫌なのに。


しばらくぼーっと過ごしていると、急に彼女と目が合う。ずっとちらちらこちらを見られている気がしていたけど、実際に目があったのはこれが初めてだ。この学校に来てから女の子との接点はないので、目があっただけでもなんだかすごく緊張する。

彼女は凛月の相手をやめて、わたしのところに近づいて来た。な、なんだろう。わたしは怯えて座ったまま身を引く。


――リボン、曲がってるよ。


ごめんね、と、そっと声をかけられて、伸びて来た手を受け入れる。というより、動くことができなくて拒めなかった。壊れかけたロボットみたいになって固まるわたし。きゅっと、胸元のリボンに触れる細くて綺麗な手。

わたしは息もできない。心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらい、どきどきしている。


――はい、直った。


小さく告げられて、手が離れていく。


「あ、ありがとう、ございます」


緊張して声が震えたわたしに、彼女はまだ何か言いたいのか、なかなかわたしの前から動かなかった。まだおかしなところがあるのだろうか。


――あの、


「名前」


彼女が何か口にしようとしたタイミングで、凛月の声が降ってくる。そのまま凛月が彼女とわたしの間に割って入る。


「リボンぐらい俺でも直せるんだけど」


なぜか真顔でそんなことを言って、わたしのリボンに触れる。心なしか引き寄せられて、前のめりになった。バランスを崩しかけて思わず凛月の腕につかまると、びくっと驚かれる。ご、ごめんなさい。

そんな凛月の姿を見て、彼女が小さく微笑んだ。


「なんで笑うの……」


凛月は納得いかない、と言った感じで口を尖らせる。わたしも、二人のやりとりの意味が理解できなくて首を傾げる。凛月はリボンから手を離さない。


「もう直してもらったよ」
「うん」


返事をしたわりになかなか離れてくれない。
さっきまで彼女と仲良くしてたのに、急にどうしてわたしのリボンに夢中なんだろう。

わたしも女の子と仲良くできるかな。自分からは歩み寄っていけないけど、凛月を通してなら知り合いになれるかもしれない。


「……絶対渡さないし」


凛月が呟いた言葉は、わたしの耳には届かなかった。