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(娘彼の退レポ凛月バージョンです)


今日は天気がいい。窓から差し込む太陽の光が、ちょうどいい感じにポカポカしていてわたしが猫だったら窓辺でひなたぼっこをしたいところ。

同じことを考えたのか、猫でもないのに窓辺に寝転んでいる人が目の前にいるんだけど。


「パパ〜、あそぼ〜?」
「え〜……パパは眠いから動きたくないんだけど」


窓辺に寝転がった凛月を、凛莉が一生懸命起こしにかかっている。でもたぶん、そんなかわいい起こし方じゃ凛月は起きてくれない。


「リリもねむいけど、きょうはにちようびだよ〜?みんなおでかけしてる!!リクもあそびたいって!」


凛莉はすぐに弟の凛空のことを巻き込むの。双子で意見が一致すれば許してもらえると思ってるのかもしれない。


「ぼくはねむい」


ほとんど凛月の小さいバージョンみたいなパパによく似た顔で、凛空が呟いた。さっき起きたばかりなのに、もう眠気が襲ってきたらしい。そういうところも凛月によく似てる。


「ほら、りーちゃんもりっくんもパパの言うこと聞いて一緒に寝ようねぇ」


最終的に凛月が二人を呼び寄せて、ちょうど日陰になっているカーテンの近くで三人そろってお昼寝。
好奇心旺盛な凛莉も、凛月に抱っこされるとすぐお昼寝モードになってしまう。

離れたところから見ると、ほんとに黒猫の親子みたい。
でも、わたしはその場所に用があるんだ。


「凛月、そこ掃除機かけるから、どいて」


わたしは絶賛、朝の掃除中だ。
掃除機で寝転がっている凛月の背中をつつくと、まどろみの中に落ちていこうとしていた凛月がゆっくり顔を上げる。


「どいてって……いまから昼寝するんだけど」


そんなこと言われても、わたしも午前中の間に掃除を終わらせたい。凛月が寝ているところだけいつも掃除機かけられないんだよ。


「そこだけ掃除できない」


わたしだって引き下がるつもりはないので、頑なに場所を譲るように促す。
すると、寝ようとしていた凛莉が起き上がってわたしのエプロンを引っ張った。


「ママもパパをうごかすのてつだってよ〜。パパ石みたいであそんでくれないの」


どうやらわたしを味方につけるつもりらしい。ごめん、凛莉。凛月は学生時代からずっとこんな感じだから、わたしにもどうすることもできないかも。


「凛月、動いて」
「ふふ……名前が手を引っ張ってくれたら起きるよ」


悪戯っぽく笑われて、これは起きるつもりなんてないな、と確信した。こっちまで気が抜けそうないつもの欠伸が聞こえてきて、ちょっといらっとする。滅多に怒らないわたしを怒らせるなんて。

凛空はもう寝てるし。

今日は朝から体調がよくないので、家事を早く終わらせて午後は休みたいなと思っていたのにこの調子じゃ長引きそう。


「……いたい」


動いてくれない凛月と、遊びに行く!と騒ぎ出す凛莉を横目に、気がついたら腹痛に襲われていた。不安なことがあるとお腹が痛くなる。


「ママ、だいじょうぶ?」


という凛莉の声を耳だけで確認した。
わたしはお腹を抑えてその場にうずくまる。


「……名前?」


凛月が心配そうにわたしの名前を呼ぶ。


「お腹痛い」


一言だけ呟いて俯くと、凛月が慌てて起き上がった。そうこうしている間に背中に手を回される。


「大丈夫?すぐ病院に」


一ミリも動いてくれなかったのが嘘みたいに、凛月の動きは俊敏だった。
待って、病院に行くほどじゃないから。


「大丈夫。じっとしてたら治るから」
「でももしものことがあったらどうするの。俺、名前がいないと生きていけないんだけど」


抱きしめられて息ができなくなる。

凛月は心配性だ。
学生時代にわたしが入院したことが今でもトラウマになっているようで、ちょっと風邪を引いただけでも片時も離れずに看病してくれる。


「パパとママ、ラブラブだ〜!」
「……なかよし」


凛莉と凛空が嬉しそうにわたしと凛月を見ていた。二人とも、凛月のこと落ち着かせるの手伝って。


「当たり前じゃん。俺と名前はずっと隣同士だったからねぇ。切っても切れない縁なの」


自慢げにそんなことを口にするけど、わたしと凛月が隣の席だったのは二年生のときだけだよ。


「もう平気。凛月が起きたから掃除機かける」
「はあ……そういうところ昔から変わらないよね、名前。さすがゴリラ」


それまだ言うの。
もうゴリラは卒業したのに。


「凛月も手伝って」


素直に甘えると、凛月は安心した様子で頷いた。


「いいよ。その代わり昼から四人で寝ようねぇ」


そういうところ凛月も変わってない。