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退院して家に帰ると、お兄ちゃんが待ち構えていた。病院から自由になれたのに、今度はお兄ちゃんから逃れられなくなる。


「いい?もう学校には行かなくていいからね」
「先生には僕から伝えておくから安心して」
「プロデュースがしたいなら僕たちのプロデュースをしてほしいな。使えないマネージャーより、名前がいてくれたほうが心強いよ」


などと、よくわからない言葉を矢継ぎ早に並べ立てられて、わたしはその一つ一つに小さく首を振った。嫌だ、とはっきり言うことはできない。わたしの精一杯の拒絶だった。


「行ってきます」


家に帰ってから2日後。今日から登校することに決めたものの、昨夜からお兄ちゃんに見張られているせいでなかなか家からでられない。


「いってらっしゃい。聖夜くんのことはママに任せて。学校がんばってきてね」


お母さんがお兄ちゃんの気をそらしてくれたおかげで、なんとか家から出ることができた。
さすがにしばらくしたらお兄ちゃんも落ち着くだろうけど、これが毎日続いたら登校するだけで気が折れそう。


*


「退院おめでと〜」


久しぶりに教室に足を運ぶと、凛月がひらひらと手を振って出迎えてくれた。眠いのか目が完全に開ききっていない。
わたしの席は変わることなくちゃんとそこにあった。


「ありがとう」


お礼を行って席に座る。
久しぶりに来たからまた始めの頃みたいに緊張するかなと心配していたのに、意外と心は落ちついていた。むしろここにいるほうが、家にいるより息がつまらない。


「名前ちゃん、おはよう♪久しぶりねェ、体調はもう大丈夫なの?」


声をかけてくれたのは鳴上くんだった。


「はい。元気です」


淡々と答えると、鳴上くんはふわりと笑って頬に手を当てる。


「よかったわァ。心配してたの。病み上がりなんだから無理はしちゃダメよ」


怪我はもう本当に治っていて、体調も平常通りなんだけど、変に強がってまた迷惑をかけたくないので黙ってうなずいておいた。心配してくれる人がいるって、なんだか夢みたい。

鳴上くんが声をかけてくれたのを合図に、クラスメイトが少しずつ集まってくる。