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朝が来て、いつものように教室に足を運ぶ。やっぱり昼間の学校は夜とは全然違う場所。
クラスメートで賑わっている空間は、一言で言えば落ち着かない。


昨日のわたしは知らない間に眠っていたようで、気が付いたら日付が変わる直前だった。わたしを起こしてくれたらしい凛月は、なぜかすごく不機嫌だ。


「寝起きが悪いなんて、聞いてないんだけど」


なにかまた迷惑でもかけたのだろうか。
申し訳ないけど目が覚めた直後のことはなにも覚えていない。

そのまま家の場所を聞かれたので答えると、凛月と家が近いことがわかり、腕を引っ張られて学校を出た。
夜に外を出歩いたことがないわたしはちょっとわくわくしたのに、わたしの手を引く凛月はずっと無言だった。


帰宅すると、意外にもお父さんとお兄ちゃんに怒られた。

ついでにいうと、凛月の姿を見たお兄ちゃんの顔から、いつもの王子様スマイルが消えていた。
凛月に家がばれたのはまずかったのかもしれない。家のことを隠すのは、小さい頃からの暗黙のルールみたいなものだった。
でも凛月はお兄ちゃんにもお父さんにも興味はないだろうし、心配する必要はないと思うんだけど。


*

今日はまだ凛月の姿を見ていない。
わたしもしっかり眠れなくて体が重かった。一日一日がとても長く感じる。

次の時間は体育だ。
苦手なものはたくさんあるけど、体育の時間も好きではない。女子が一人だけというのが一番つらい要素だったり。


「?」


空き教室で着替えようと思ったら、なぜか体操服が見当たらなかった。
おかしい。持ってきたはずなのに。

体操服がなくなるって、どう考えても大問題だ。ペンや消しゴムがなくなるのとは訳が違う。

もちろん、家をでるときはちゃんと持っていたし、登校中に落としてきた記憶もない。
だとしたらだれかが持っていったとしか……まさかそんなことありえるわけがない。
だって男の子とは明らかにサイズが違うし、借りるにしてもわたしの体操服じゃなくていいだろう。なにより勝手に持ち出すなんてただの盗人……


「…………」


急に最近身の回りのモノが少しずつ消えていることを思い出して、頭の中で一つ一つの点が繋がる。

もしかして、いじめられてる、のかな。
陰口は何度も経験したことがあるけど、こういう手法は初めてだ。

気がついたら教室にはだれもいなかった。
みんなが今までどうしていたのかは知らないけど、わたしがここに来てから、クラスメイトは更衣室で着替えているみたいだった。昔からそうだったのかな。
わたしも空き教室で着替えているから、あまり意味がないんだけど。

もしかしたらだれかわたしの体操服に心当たりがあるかもしれない。

よし、確認にいこう。
どこにって、それはもちろん。


何も考えずに男子更衣室の扉を開けたら、一瞬で空気が凍りついたのがわかった。
しまった。そりゃ、そうなるよ、と取り返しがつかなくなってから思う。


「!?」
「……名字さん!?」


どこからか「ひゃっ……!」なんて声も聞こえたし、服を脱ぎかけたまま固まっている人もいるし、わたしはそれを見て無表情だし、もう状況は最悪としかいいようがなかった。

更衣室なんだから、着替えていて当然だ。
もっと冷静に考えるべきだった。
目の前のことしか考えていなかったの。


「ご、ごめんなさい。失礼します」


言うだけ言って扉を閉める。
男子更衣室を覗くのはさすがにまずかった。