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ひとまず、ラミアスの言う所の「しかるべき所」へ連絡を取るために、キラはストライクにアインはグリフェプタンに乗り込み、通信を試みた。


「こちらXS-00グリフェプタン、地球軍応答してください!」

「こちらX-105ストライク。地球軍応答願います!」


二人はインカムをつけて発信するが、ノイズが入るばかりで何も起きない。


『…ねえ、アイン』


ストライクから通信が入った。キラも大分操作に慣れてきたらしい。


「どうしたの?」

『もしかしなくても、通信妨害が入ってるのかな?』

「そりゃ、強奪事件起こそうってんだから、電波の妨害くらいはするかもしれないわねー」

『そうか……あ、下で呼んでるよ。一度降りよう』

「了解」


開けたままのハッチから降りていけば、サイがトレーラーを運転してきた。
ベンチに腰掛けるラミアスの肩の傷を気遣うミリアリアに、アインはなんだか複雑な思いで近づいた。サイもトレーラーからおりてくる。


「それで、この後僕たちはどうすればいいんです?」

「ストライカーパックを。そしたらキラくん、アインさん、もう一回通信をやってみて。」

「はい」

「わかりました。」


トレーラーの中にもぐっていったキラが呼びかけてくる。


「どれですか、パワーパックって?」

「武器と一体になってるの。そのまま装備して!」


後ろでのんきにいつ帰れるかの心配をしている皆のことは、この際気にしない。まだ充分にエネルギーの残っているグリフェプタンは、いつでもフェイズシフト・システムを展開し戦闘できるように待機させた。
ストライクが起動するまでの間、アインはコクピットの中を漁っていた。なにやら小さな隠し扉のようなものがたくさんあり、その扉を探すことが楽しくなったのだ。シートの下、丁度ふくらはぎが当たるような位置にも扉を見つけ、開いてみた。


「何…これ?」


そこには大量の薬品や包帯などの医療品が入っていた。


「そういえば、この機体のOSはあまり銃器をつけられないように書かされた…」


顎に手をやり、記憶を探る。火器統制のシステムは最低限に抑えられ、その代わりに新型兵器の制御プログラムを組んでいた。だからこそ、従来の開発者ではなく一介の国民にすぎないアインに仕事がまわってきた。


「もしかしてこのグリフェプタンは、戦闘用に作られたわけじゃないの?」


モビルスーツが戦闘以外の何に使われるというのか。産業改革から大型化した工業機械は、本来人の力では出来ないことをするために作られた。その大型機械に医療品が乗っている。人間では出来ない、医療活動を行うということだろうか。


「戦争での人命救助用のモビルスーツ?」


一人つぶやいて、まさかねーと笑ってみるが、それ以外の答えは見つからず、黙り込むしかなかった。


ピーピーピー


間抜けにも聞こえる高い音に、アインの両肩がびくりと跳ね上がった。


「警告音?」


突然の警告に、心臓が嫌に大きく脈打つ。


「あれは…」


ディスプレイに表示されたのは、味方と敵が一体ずつ。あわててフェイズシフト・システムを展開する。グリフェプタンは再び無彩色に染まった。


『装備を付けて!早く!!』


外の集音マイクから、ラミアスの声がする。なれない操作ゆえか手間取るストライクに敵機が迫る。


「間に合えー!!」


構えたビームサーベルは唯一といっていいほどの武器。フットペダルを踏み込み空中へとグリフェプタンを躍らせると、敵機に獲物を一閃した。


「くっ」


はじき返されるようなGに耐え、どうにか着地する。敵はいったん距離をおいてまた迫ってきた。正直、グリフェプタンの装備で戦うことは出来ない。


『アインどいて!!』

「頼んだ!」


装備の装着を終えたストライクが立ち上がる。とっさにアインは横っ飛びに退いた。

その時


ドーーン


近くの山が火を噴いた。その煙と爆炎の中から、白と灰色、赤色で塗装された艦が現れ、グリフェプタンのモニタに味方機の情報が表示される。


「あれは?」


ディスプレイに表示されたのは


「アーク…エンジェル………大天使…」












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