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なんとか突風をたえたアインとグリフェプタンは、砂埃が納まるのを待ってストライクへと近づいた。ストライクの足元にはミリアリアたちカトウゼミの4人がいて、見知らぬ茶髪の女性を介抱していた。服を見るに一般人ではなく工場関係の人間らしい。
グリフェプタンを停止して、こちらを見上げる4人とキラの視線を受けながら、ワイヤーで地上へと降りる。本来ならパイロットスーツを着て行う機体の運転を私服でしたせいか、体中が痛い。


「アイン!!無事だったのね」

「ミリィ…あなたも無事で何より」


感動からか抱きついてくるミリアリアをなんとか引き剥がして、男性陣のもとへ向かう。
一番にキラが怒ったような困ったような顔で


「アイン!どうしてあんな危ないことしたのさ!!」

「あぁー、お説教は後で聞くし、事情もきちんと説明するから休ませてよ…」


大げさなポーズで耳を塞いで見せれば、キラは諦めたように「分かったよ」と溜息をついた。


「気が付きました?」


その時、キラの向こうにある小さな屋根のついたベンチでミリアリアの声があがった。どうやら女性が目覚めたらしい。


「キラ!」


ミリアリアに呼ばれたキラは女性の傍らに膝をつくと、優しく話しかけた。


「ああ、まだ動かないほうがいいですよ」


女性は苦しそうな顔でキラを見上げると、目覚めたばかりで思考がはっきりしないのか、緩慢な動きで周囲の様子を確認した。ただの工場努めの人間にしては、状況確認への意識が高いように感じる。


「すみませんでした。なんか僕、むちゃくちゃやっちゃって…」


謝ることじゃないと思うけど、とは口には出せず、口を開かないままアインも女性に近づいた。


「お水、いります?」


ミリアリアが気遣わしげに差出したボトルを見て、女性はなんとか礼を言うと、キラに支えられてどうにか飲んだ。


「とりあえずは、大丈夫みたいですね」

「すげーよな」

「ガンダムっての」


カズイとトールがストライクに上って、ふざけているのかそのコクピットに座っていじっている。
あの機体が軍事機密に関わるものだというのはすぐに分かるだろうに。アインは盛大なため息をついた。


「アイツら…馬鹿じゃないの?」

「あなたたち、その機体から離れなさい!!」


女性の銃が、機体にいる二人の間を撃った。女性は立ち上がり、銃を構えて威嚇したままストライクへと向かう。その動きや銃の構えはとても先ほどまで気を失っていた人のものには見えない。やはり軍の人間だったかと、アインは警戒しつつも自分が武器を持っていないことを再確認した。こちらが武装していれば、あの女性は間違いなく撃ってくるだろう。


「何をするんです!」


慌てて女性に駆け寄るキラに習い、アインも女性の近くに寄る。民間人だから軍事に関わらせたくないのだろうか、女性はかなり憤っているようだ。


「やめてください!!彼らなんですよ、気絶しているあなたを降ろしてくれたのは!!」

「失礼ですが、軍人としては、いささか軽率な行動に見えます。」

「そう、ね…。助けてもらったことは感謝します。」


言葉と裏腹に女性は銃をキラへと向ける。アインにはちらりと視線を投げて、それからキラに視線を戻した。抵抗の意思がないことは分かってもらえたようだ。


「でもあれは、軍の重要機密よ。民間人がむやみに触れていいものではないわ。」


必死な彼女の言葉に、子供はただ戸惑うしかない。そんなこと突然言われてももっと丁寧に説明しなくちゃ彼らには伝わらないだろう、というのが正直なアインの感想だ。


「なんだよ。さっき操縦してたのはキラとアインじゃんか」

「トール!!」


少年に向けられた銃口に、アインは手を顔にあてて、あちゃーと呟く。煽ってどうするというのか。


「みんな、こっちへ」


さすがに撃たれはしなかったが、女性いわく、軍の機密を知ってしまった以上、このまま解散はさせてもらえないらしい。










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