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隣で立ち上がった機体のおぼつかない様子に、アインは内心ひやひやしていた。全て自分が組み上げたと言っても良いソフトウェアを積んでいるこの機体なら、ハードである機体そのものの装備についてもそこそこの理解がある。
けれど隣で立ち上がった機体のほうは、そうはいかないはずだ。ただの的にならないことを祈りつつ、アインは自分の機体に意識を集中した。
02:悲劇の幕
「みんなを…守るために」
自分も隣の機体も立ち上がったものの、残りの一体はふらふらと動き回り、強奪された期待とザフトのザクの攻撃を避けようと必死だ。ザフトの攻撃を自機で回避しつつ、民間人が居るだろう避難シェルターに建物の破片が飛ばないようにするのは、そんなに簡単ではないはずだ。
強奪されたグリフェプタンから機体名が見える新型機たちは、すぐに戦場を離れようとしているのか、様子を伺って後退しつつある。
「…手加減されてんのかな?それとも奪うだけが目的なのか……」
突如、もう一機の味方、機体名にストライクと表示されている者の動きが良くなった。ふらついていた機体をあそこまで立て直すには、OSの書き直しなりプログラムファイルの修正を行って重力を加味した各種出力系の調整が必要なはずだ。
「…まさか……キラ?」
これほどの動きを簡単に一般兵が出来るはずがない。だとすれば共にカトウ教授のもとで学んでいる、コーディネーターの…
「あなたじゃなくちゃ…出来ないよね?」
味方であるなら問題はない。
だが、こちらの動きがプロのものでないことは、向こうの強奪機体にもすぐにわかるだろう。
「だったら尚更……」
アインの瞳孔がすっと細くなる。
「負けられない!!」
先手必勝でどうにかするしかない。
スイッチを押してフェイズシフトを展開する。とたん、関節部分以外の灰色だった部分も色づいていく。黒く、夜空を、宇宙を写すように。
グリフェプタンの動きは、とたん見違えるほどのキレの良さを見せ、残りのザクをなぎ倒した。左からのサーベルを回避してその腕を掴み、手前に思いっきり引く。グリフェプタンの右足に装備されたビームサーベルを引き抜いて、相手のメインカメラを潰す。
それを見てかかってきたもう一体には顔面横側のガンで牽制し、勢い良くつっこんで体当たりの要領で倒す。ザクが転ぶ前に腕を掴み、背負い投げ。
人間相手に行うような格闘術でも敵を沈黙させられたことに驚きながらも、二体のザクが動かなくなったことを確認し、アインはコックピットの中、肩で息をした。
「良いから避けて!!」
振動で押してしまったのか通信が繋がっており、ぜっぱ詰まった女性の声がした。
とたん。
三体の倒されたザクは自爆した。
突風が機体越しに伝わってくる。
視界が砂埃に覆われた。
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