---- あなたたちの願いは、エントロピーを凌駕した。

「あなたは、ミューザ?」

「ほー、めっちゃ美人じゃないのー!」

---- ふふ、褒めても何も出ない…

---- さぁ、あなたたちの望む世界を構築しましょう。

「はい、お願いします」





3人には宇宙の動きが数式で、光の粒子で、ムービーで、手に取るように把握できた。


---- あなたたちの魂は、人間や他の生き物とは一段回違う場所に移動した。

---- 言うのであれば、あなたたちはこの宇宙そのもの、宇宙の柱です。



宇宙の全てから、悪い部分だけが取り除かれていく。そしてその悪い部分だけがより合って1つの世界が誕生した。残った部分はその悪い部分の倍くらいの大きさで、一人で支えるにはとても辛そうだった。


---- あなたたちはあの"悪しき世界"を消すと言いました。

---- それはあなたたちの誰かが、世界と共に消えるということ。


「わかっています、ミューザ。それは私がやる。」

「ちょっと待ちなさいよ早苗!それじゃ何のために3人で来たのかわかんない!」

「大丈夫、私があの世界を担って、二人の世界とはちょっと距離を置くだけだから。そうしたら、お互いの世界は干渉しあえないでしょ?」


早苗は、二人に有無を言わさず、その世界を自分に取り込んで二人から離れた。


「でも、定期的に会おうか、私たちは。3人でお茶しようよ!」


春歌と友千香が、納得したように頷いた瞬間 --------








夕日が沈む川辺を歩きながら、藍は何か物悲しい気持ちに襲われた。夜は女神"早苗"の司る時間でもうすぐその夜がやってくる。この時間になるとどうしようもなく悲しくて恋しくて、誰かに会いたくなるのだ。

もちろん、この後待ち合わせしている嶺二たちに会いたい、というわけではない。


「考え事ですか、未風さん」

「トキヤか。」


突然前方からやってきた彼にそれ以上の返事をするのも面倒で、そんなことよりも今迫ってくる夜を感じていたかった。トキヤもよくこの時間にこの場所で出会う。


「夜が、きますね。夜の女神の時間が」

「女神信仰者なの、トキヤは?」

「…強いていうなら、夜の女神を、敬愛しています」

「えー俺は朝の女神が好きだなぁ。ポカポカした気持ちになる!」


藍は突然背後からやってきた音也に驚いて振り向けば、他にもいつもの真斗と那月、それにレンや翔も一緒だった。


「夜のレディ…というと、とてもそそられないかい?」

「やめろ神宮寺、不謹慎だぞ。」

「んーボクは、昼の女神もすごく魅力的だと思うんだけどなぁ〜」


待ち合わせ相手の妙な登場にげんなりしながらも、藍は夜空に浮かび始めた星を見上げる。3人の女神をかたどった星座は、この惑星の自転の関係で季節に関係なくずっと見える。もちろん見えないが、昼間もずっと自分たちの上空に浮かんでいるらしい。
藍につられてトキヤが、そして音也が。気づけば全員が夜空を見上げていた。今日の星座も、とても綺麗だ。


「自らを犠牲に、この世の全ての穢れを葬った夜の女神に、せめてもの安らぎをと夜を領分にさせた。朝の女神も昼の女神も、彼女をとても好いていたんですね。」

「那月は相変わらず星座とかは詳しいよな。」

「はい、朝の"アメージング"、昼の"スイート"、夜の"オールスター"。どの星もとても綺麗なんですよー」


那月ののどかなこえに、どれが一等星なのかで騒ぎ始めた音也と嶺二、それから巻き込まれたセシルとカミュ、それを見守る他の面子も、きっと聞こえているはずだ。




---- 大丈夫、皆ならとびっきりビックなアイドルになれるよ



夜の女神は、今日も僕等を見守っている。






EPILOGUE - 「All of the World」 END







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