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【名前はまだない ロキ「雪ノ下で咲く花」】



オーロラという、空を覆う花畑に私は歓声をあげた。綺麗だ風に揺れる色とりどりの花のようなその眺めは、私の心をすっと爽快にさせる。少し冷えてきて動きが鈍っているので、私は必死にロキの腕に捕まったままで空を見上げている。


「連れてきて正解だったみたい、楽しそうジャン」

「あぁ、これは……素晴らしく綺麗だ。私もあんな風に咲きたい」


卒業後、制服から花びらと同じ色の洋服に戻った私に、ロキは1枚のストールを用意してくれた。小人族が作ったのだという自分の周りの温度を適度に保つストールを、ロキが自分の道具と取り換えて用意してくれた。もちろんそのことも嬉しいが、私は寄るだけで暖かいロキの側に出来るかぎり居るようにしている。
ロキも神としての姿に戻っているため、学園で始めて会った時以上に赤い。黒と赤の服は悪神で炎の神である彼をよく表していると思う。ただ、内腿が見えているのは…その、目の毒だ。いや、保養だ。ともかくちょっと気恥ずかしい。


「シャナは、今のままで十分綺麗だと思うけど?」

「っ…そういうことを、言われると、心臓が持たない!」


後ろから抱きつかれて耳元で囁かれる。どうも私はこれに弱いようで、こうされるとすぐに体の力がぬけてしまう。暖かいから安心するのだと言い訳したことがあるが、照れちゃって可愛いと返されてもっと動けなくなったのは記憶に新しい。

そんなことを思い出しているとロキの手がさわさわと私の太ももを撫で始め、長いスカートの上から足の形を確かめるようにうごく手に、ぞわぞわと体の内側が熱くなる。気持ち良いような、それでいて怖いような。


「ロキ!何をっ」

「え〜、だって最近はバルドルやトールちんと4人で居ることが多かったから、二人っきりを楽しみたいなァって思ってるんだよねェ」

「やめっ…ちょ、体内発火しそうで怖い!」

「ぷふっ!あながち間違いじゃないんじゃない?もっと暖めてあげる」


ちゅぱちゅぱと音を立てて耳に吸い付かれる。ほ、本当に、干からびてしまいそうだし、内側から火がついて燃えてしまいそうだ。腰のあたりがうずうずとして、おかしな感じ。恥ずかしいのにもっと触って欲しくて、よく分からない。
ロキの触れていた手がすっと内腿を足の付根まで撫で上げたかと思うと、スカートのスリットから中へ入ってきて、今度は直接肌を撫でてくる。反対側の腕でぎゅっと抱き寄せられて、逃げたいのに逃げれない、そう分かっていても腰が勝手に逃げようとするという、もう羞恥で息も絶え絶えになる。


「言ったでしょ?温めてあげるって」

「そういう意味か!変態!」

「その変態に惚れてここまで来たのは一体誰ェ?」

「ぅ、やっ」


下着越しに陰核が刺激される。たかだか花の精でしかない私にも、そんな感情はちゃんと備わっていたらしい。


「はっ……ぅう…っ……い…や…………ぁんっ…!」

「ほらほら、もっと鳴いてみせてよ。」


耳元と自分の足の間からする水音に、頭がおかしくなりそうだ。


「オレはシャナとイケナイ遊びがしたいんだケド?」

「勝手に始めてるくせに、やっ…何を言うか!」

「オレが飽きるまで、今後ずっと相手してもらうから」

「…っ。飽きたら、許さない!」


はいはい、と楽しげに笑ってみせたロキに、結局のところ私は散々喘がされ、たくさん鳴かされ、そしてそれ以上にたくさんの「愛してる」という言葉をもらった。









◇ ◇ ◇








「へぇ、おめでたいね!ついにロキがお父さんかぁ…羨ましいな」

「……昔とは比べ物にならない進歩だな」


私とロキの暮らす家に、バルドルとトールがやってきていた。度数の低いお酒で乾杯して、私だけは普通のお茶を飲む。その様子に気づいたバルドルに尋ねられ、私たちはさっそく本日の本題だった2人への報告をしたのだ。
私のお腹にはロキとの子供がいる。そう言った時に2人の顔は同じように驚愕の表情を浮かべ、そしてその後優しい笑顔に変わった。


「ちょっとちょっと〜、ナニソレ。オレがまるで悪童みたいな言い方しちゃって!」

「だって、北欧のトリックスターがまともに恋愛結婚して子供を授かるなんて…誰が想像していたかな?」

「……同感だ。しかも相手は花々の女神。驚くのも無理はない」

「2人ともちょっと酷いんじゃない?」


ロキの返しに笑い合う幼馴染たちを見て、私は少し寂しいような感じがした。
彼らには私の知らない過ごした時間があり、もちろんそれを埋めて余りあるくらいロキと一緒に居るけれど、それでも私の知らないロキが居ることは寂しい。

ふと、ロキの手が私の頭の上に乗せられた。驚いてロキの顔を見れば、いつもの優しく私を誘惑する顔を向けている。狡猾でずる賢くて、そのくせちょっと抜けているが優しい彼のことだ。私のちょっとした寂しさなんてお見通しなんだろう。
嬉しくなって頭をロキの肩へ寄せると、頭上のすぐそこからふふっという笑いが振ってきた。


「だーいじょうぶ、シャナがオレのこと大好きな以上に、オレもシャナを愛してるから。別にバルドルたちが心配するようなことないって☆」


最後はおちゃらけてウインクしてみせたロキに、場の空気はまた軽く楽しいものに戻った。本当に不思議な人だ。

そして私はこれから先もずっと、ロキの隣で綺麗な花を咲かせ、そして良い香りで彼を誘惑するんだ。私だけを愛し続けてもらえるように。











2014/06/13 今昔
ぷち一万打記念(もうすぐ2万だけど)ということにしておいてください。




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