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耳が痛くなるほどの悲鳴と、目が溶けそうな程の光が放たれた。

尊の太刀が切り裂いたヤマタノオロチは、ひとしきり目を開けられない程の光を放つと、どこかへ消えてしまった。空中を漂い空へ登っていく蛍のような光は、恐らくヤマタノオロチだったものなのだろう。


<助けて…、神様…>
    <露神様、どうか雨を>

 <…ひもじい……苦しい…>
      <何故助けてくれないのか!>
   <会いたい>
 <神など、嘘っぱちだ…>


光たちからは何かを願うような小さな声が聞こえ、早苗はぎゅっと胸が苦しくなった。
こんなにもたくさんの願いが、神々に届くこと無く消えてしまった。どれほど願っても耳を傾けてくれない神々に対して、願った人間は何を思うだろう。もしかしたら、箱庭にくるべきは神々だけではないのかもしれない。
早苗が「神を理解するまで外れぬ枷」を付けられたように、人間も神を理解する努力をするべきなのかもしれない。

日本には八百万の神という言葉がある。万物に神様が宿っているという考え方で、囲炉裏だったり玄関だったり、お鍋や着物、桐箪笥なんかにも大小の神々が居るというものだ。そんな風に身近に神を感じていたはずの日本人は、どうしてこうも神を忘れてしまったのだろう。


「ごめんなさい。助けてあげられなくて」


早苗は空に舞い上がる光にそっと触れ、すっと息を吸い込んだ。この祈りを捧げた人間の時代にはなかったかもしれない、英語の鎮魂歌。どうか安らかに眠って欲しい、そしてどうか、神を嫌わないでほしい。こんなにも優しい方なのだから。そう願って歌った。










【 15:恋愛END「銀の雫」 】








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