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※ロキ、帰還END






【15:恋愛END1「日曜の朝は…」】









季節は巡り冬。
しんしんと降り積もっていく雪を見て、ウーサーと白兎は窓から外へと飛び出して行き、トッキーだけは早苗の布団へ潜り込んで寒さをしのいでいる。早苗はお気に入りのブラウスの上にカーディガンを着て、それから白衣を身にまとった。
日本もそれなりに雪の降る国ではあるが、寒いものは寒い。とにかく寒いのだ。慌てて購買にこたつの発注をかけ、保健室には古風な薪のストーブとこたつ、それからミカンが大量に入ったダンボールが設置された。

この学園に暦は無いが、バルドルと月人が「学園内のカップルのために」といって初詣の計画を立ててくれているそうで、早苗は冬になったばかりなのに気が早いなと溜息をついた。若いって素晴らしい。
とはいえ、冬になってしまったということは、卒業が刻一刻と迫っているということだ。ロキの枷が外れた直後にバルドルの枷が外れ、そして他の神々もそれに続くように枷が外れていった。


「枷が外れないのは私だけ、ね」


図書室で入手してきた振り袖特集の組まれた雑誌をパラパラとめくり、早苗は深くため息をついた。神々の枷は外れたにも関わらず、早苗の八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は外れる気配はない。
本当に神々について理解出来た時に外れると言っていたが、あんなに個性豊かな神々について理解しろなどと無理な話にも思えてきた。今日は土曜日、丸一日神々と過ごして理解でも深める努力をしてみようか。


「おっはよ〜!ねぇねぇ、白兎見なかった?」


がらっと保健室の扉が開き、ロキがひょっこりと顔を出した。まだ割りと朝早いというのに、こんなに早くからやってきてくれたのかと胸がほっこりする。


「おはよう、ロキさん。白兎ならさっき雪にはしゃいで遊びに行っちゃった」

「なーんだ、雪くらいで喜ぶなんて…」

「箱にはでは初雪だから…というか、冬になって早々に降りだして、私も驚いちゃった」

「オレの故郷はずっと雪だったからなぁ…珍しくもなんとも無い。けど、シャナと一緒に見るのはちょっと楽しいかも」


照れくさそうに笑ったロキは換気のために少し開けていた窓に近寄り、手をついて外に降る雪を眺めはじめた。故郷に降る雪とどんな違いがあるのだろうか。そんなことを考えつつ、早苗はもう一度雑誌に目を落とした。

成人式の時に買った振り袖がとても気に入っていたので、それと同じようなデザインが見つかればそれを見せて購買に発注をかけたいのだ。ただ、全く同じデザインもつまらないかと思い、結衣が浴衣でしたように恋人に合わせた柄というのもやってみたい。


「振り袖?すっごい動きづらそうなんだけど…これ着るの?」

「うん、草薙さんが着るらしいから、私も一緒に着ようかと思って。日本で新年っていったらこの格好なの」

「脱がしづらいから却下」

「……いずれ脱がすつもりがあるんだ…」


当然でしょっ、といつものように語尾に星が見える言い方をされ、早苗は頭を抱えたくなった。晴れて恋人同士なのだからそういうことがあっても良いとは思う。思うが、自分の体に自信があるわけでもないし、幻滅されないかと心配にもなる。
そんなことは露知らず、ロキは早苗の雑誌を勝手にめくり始め、帯の結び方のページになるとスピードを緩め着物のたたみ方のページで手を留めた。


「なんだ、こんな簡単な作りになってるわけ?」

「構造は単純だよ、着付けが面倒なだけで」

「じゃぁオレが作ってあげるっ!」

「え?着物、を?」


確かに素人目には布を裁断して縫い合わせるだけに見えるが、着物専門の服飾系の職人が居るくらいに奥が深いものだ。ロキがどんなに手先が器用でも、他国の民族衣装を作り上げることが出来るのだろうか。
もちろん、ロキが作ってくれたものを着れるならとても嬉しい。早苗はロキに雑誌を手渡すと、作れそう?と尋ねた。自信満々にうなずき返され、早苗は振り袖についてはデザインも用意することも全てロキに任せることにした。


「あ、白兎たち帰ってきたみたい。ロキさん、朝ごはんまだなら一緒する?」

「する〜!」


早苗は私室に戻ると先日購買で手に入れたソーセージ各種とベーコンを取り出し、マフィンを焼いて軽い朝食を用意した。






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