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翌日、朝一でロキと白兎が保健室へとやってきた。
すでに着替えて掃き掃除をしていた早苗をみると、パジャマが見たかったなどと言い出し、黙らせるために朝ごはんを一緒に食べることにした。
どうやら早苗が人間であるということも吹っ切れたらしいロキは、出来るだけ近くに寄りたがり、自分で連れてきたくせに白兎が早苗に近づくと引き離し、ウーサーも引き離しと独占欲は強い様子だった。
流石に兎たちが可哀想な程だったので、ほどほどにねと言うとイタズラがバレた子供の顔をされてしまった。


「だって〜、オレよりシャナの近くに居るとかムカつくし」

「自分で作った子でしょう、私の護衛だと思えばいいんじゃない?」


それでも納得出来ない様子のロキは授業が始まるギリギリまで早苗にひっついていて、保健室にバルドルとトールが呼びに来ても散々ぐずって教室へ向かっていった。昼休みや放課後になれば会えるというのに、と思ってはいても、やはり一緒に居たいと思ってくれていることは嬉しい。お国柄なのか神だから感覚が違うのかは分からないが、日本男子ではこうハッキリと感情表現してくれる男性は少ないだろう。
保健室に置き去りにされた白兎も散々早苗に甘えたがり、仕事が出来なくて困っていると最後はトッキーに突かれてウーサーの仕事を手伝っていた。

そして昼休みになると、チャイムが鳴り終わったかどうかというくらいに、ロキが保健室へ飛び込んできた。食堂へ行くこともしていないのは明らかで、早苗は作りかけだった焼きうどんを増量した。更にバルドルとトールもやってきたので、最終的に残っていたうどんを全て使って料理することになった。


「へぇ〜、日本の料理は興味深いものが多いね!焼きそばは一度食堂で食べたことがあるんだけど、これも美味しいよ。」

「お口にあってなによりです。焼きうどんは焼きそば屋さんが麺が足りなくなった時に、丁度手元にあったうどんを使ったのが始まりらしいですよ」

「……相変わらず博識だな。道理でロキも授業以外の内容ばかり詳しくなるはずだ」


早苗の隣にひっつくようにして座るロキは、焼きうどんを飲み込むとニヘラっと笑ってみせた。そして残っていたソーセージをフォークに刺すと「あーん」と早苗に差し出してきた。


「ほら、シャナ早く〜、あーんして、あーん」

「え、今ですか…」

「そう!今!」


バルドルたちの前でやること無いだろうと思ったが、朝の様子を考えると本当は二人でご飯にしたいと思ってくれていたのかもしれない。そう思い早苗は大人しくロキのフォークからソーセージをパクリと食べた。
案の定、バルドルがおぉっと感激したような声をあげて、照れている様子が可愛いなどと言うものだから、ロキに拍車をかけてしまった。ロキはぐっと自分の椅子を早苗に近づけると、早苗の肩に腕を回した。


「そーゆーこと!いくらバルドルでも、シャナに手ぇ出したら怒るからねェ!」

「大丈夫だよ、わたしは二人が幸せで居てくれるのが嬉しいんだから。ね、トール?」

「……そうだな。一件落着したようで、よかった。矢坂も大変だったな…いや、今後も大変なんだろうが……」

「ちょっとトールちんそれどういう意味ィ?」


不満気に口をとがらせるも、早苗が宥めるようにロキの膝辺りに手を載せると、満更でもない様子に戻ってくれた。

長くても卒業まで。それまでしか一緒に居られないのであれば、この時間を精一杯二人で過ごしていたい。きっと二人が思うことは一緒だと、早苗はそっとロキの肩に頭を寄せた。













第13話、終。













2014/06/19 今昔
次回は最終話、まずはEND1風のやつから。




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