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しばらくするとシートを超えて飲み会のような絡みを始めたアポロンに続き、だんだんとシートの区別なく交流が始まった。早速串団子を片手に結衣がやってきて、お団子のお礼を言ってくれた。


「矢坂先生、企画とそれにお団子も。今回もお世話になりました、ありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ毎回楽しませてもらってるから。」

「あれ、このお団子……」


結衣は早苗の目の前に置いてあった兎団子のタッパに気づいたようで、タッパごと持ち上げると中に居る兎たちをじっくりと眺め出した。


「可愛い…これも先生が作られたんですか?おひとついただいても…

「駄目だっ!」


ぱっと結衣の手からタッパが消えたかと思うと、ロキが敵対心まんまんといった顔で膝立ち状態の結衣を見上げている。そういえば団子を作っている時も、早苗が他の人にもと言ったら全力で反対していたなと、早苗はロキの様子を見守ることにした。


「これ作ったのはオレだし、兎は全部シャナ用なんだから食べちゃ駄目ェ。草薙の分はなーいーのー!」

「えっと…すみません。」


突然口出しされて結衣もショックを受けるかと思ったが、どうやら突然のことすぎてきょとんとしてしまっている。少し可哀想なので口出しをすると、ロキは眉をハの字にして口を尖らせた。


「ロキさん、そこまで言わなくても…。兎の完成度が高いから、誰だって食べてみたくなっちゃいますよ。それだけロキさんが凄いということです。」

「だって草薙が勝手に食べようとするんだもーん。オレがシャナセンセのために心を込めて作ったのにー」

「私は大丈夫です、矢坂先生。…ロキさんと先生の仲が凄く良いのは分かりましたから。」


心を込めてだの、仲が良いなど言われ、早苗はここへ来るまでのことを思い出してぽっと頬を染めた。


「ロキさんも、トト様は苦手でも矢坂先生のことは大好きなんですね!」

「ん〜…、そういうことにしておいてあげても、イイけどォ」


ロキの台詞に、からかい口調だった結衣と、向こうから見ていたアポロンや尊の顔が驚きのものに変わった。何事かと想っていると、


チュッ


自分の頬でした軽いリップ音と、それから頬に触れた感触。
何が起きたのか理解して真っ赤になっていくのが自覚できた。お決まりの独特な笑い声があがり、アポロンからは祝福が、結衣からはからかいの言葉が飛んでくる。本当に今日のロキはどうしてしまったのだろうか。いつものように早苗をからかって遊んでいるのか、それとも本当に好きでやっているのか。
生まれた国も違う上に、人間と神様では価値観が異なる。それは今までの生活で学んだことだったが、それがこれほどにもどかしいとは思っても見なかった。

もちろん、早苗もロキのことは良い友人として好きだが、こうも立て続けにどきどきさせられると、緊張のせいで異性としての好きと勘違いしているのか、本当に男性としてロキが好きなのか。さっぱり分からなくなってしまいそうだった。









第11話、終。











2014/06/16 今昔
ロキさん、こっから押していきます。頑張れロキ。




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