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※ ヒロインは美術部
※ 短編「Gentle moon」の続き
※ 生温いが、えっちぃネタです





「矢坂早苗、君に話があります」

「はい、どうされました?」

「俺と、付き合ってください」










【 月を食らう、月が食らう 】











「は?」


可愛げの欠片もないことは重々承知している声が出た。早苗の机の前に立ってこちらをじっと見ている月人を見、教室に居て今の台詞を聞いたらしいアポロンたちがポカンとしているのを見、それから顔を真赤にしている結衣を見た。誰もリアクションをくれないと分かると、早苗は小さくため息をついた。
目の前の青年は早苗と結衣が「戸塚月人」という名前をさし上げた神、ツクヨミだ。感情が希薄なことはこの半年でよくよく分かったし、まして他人に告白することもなければ、そもそも恋をすることもなさそうな彼。つまり、


「構いませんけど…どこへ?」


という回答になるわけである。


「実は、今日は月食が観測できると先ほどトト・カドゥケウスから聞いたのです。ここは生徒会のメンバーとして、積極的に他人と交流を深めにいくべきだと判断しました。」

「お誘い、ありがとうございます。私でよろしければご一緒します。」


ひと通りの受け答えに、背後でバルドルが安心したようにふぅっとため息をついたのが見えた。同じ生徒会のメンバーだというのに、まさか本気で月人が告白したと思ったのだろうか。確かにアポロンとは違う意味で人目に頓着しなさそうではあるが…。
ともかく天体観測をするなら月と月食に関することを調べておかなくてはならない。早苗は昼休みに入ると同時に食事を広げちゃっちゃと平らげると、結衣に断りを入れて図書室へと向かった。

トトに聞いてみたところ、今夜は皆既月食が見られるらしい。日本でも月食は観測出来るが、皆既月食は観測出来る回数が少ない。月食そのものも地球で見ようと思ったら一年に一回あるかないかの頻度だ。
早苗は簡単に内容をまとめてルーズリーフにメモすると、帰りに購買へ寄って新しい色鉛筆とスケッチブック、望遠鏡を受け取った。せっかくならしっかりと見てみたいし、作品として残すのも良い。
赤銅色に染まる月を見るのは始めてだし、何より男の子と二人で見るというのは年頃の女の子にとっては一大イベントだ。

早苗も最初は生徒会にはいろうと思っていた。一緒の高校に通っていた結衣が居たし、何より一番に話をした月人が居た。もっと仲良くなりたいと思い生徒会に入ろうとしたのに、何故か早苗は部活動の統率をとれと言われてしまった。
仕方なく美術部…というよりも、部員の数が少ないのでトトに「愛好会」と呼ばれている活動をはじめた。その間に生徒会の4人はどんどん仲良くなってしまって、なんだかソワソワと落ち着かない。
早苗を取られたような気もするし、逆に月人を取られたような気もする。ともかく、自分だけ除け者にされているようで気分が悪かった。そんな時に、月人から月食を見に行こうと誘ってくれたのだ。断るはずもない。



午後の授業を受けている間も落ち着かなく、寮に戻って一度私服に着替える時も何を着ていくか何着も着たり脱いだりを繰り返した。結局スカートとブラウスと薄手のカーディガンという格好になり、スケッチブックなどが入ったトートバックを持って、待ち合わせ場所である寮の出入口に向かう。


「お待たせしました」


早苗が出てきた直後に月人も出てきて、二人はなんとも言えない微妙な距離感を保ったままで、観測に向いているだろうと思われる学園の外へ向かった。


「皆既月食が見られるなんて、幸運ですね」

「そうですね。観測出来るのは数年に一度。箱庭の環境に感謝しなくてはなりません」

「月人さんは、やっぱり月を見るのはただのお仕事…という感じなんですか?」

「…はじめは、そう思っていました。でも、君に『月の明かりが暖かい』と言われてからは、俺にも楽しむ余裕が出来たように思います」


穏やかな笑顔は見ているこちらまで暖かな気持ちにさせる。早苗は少し前に二人で見ていた月を思い出し、やはり彼は優しいなと実感させられた。
二人で森を抜け少し開けた場所に出ると、その片隅に望遠鏡を設置した。トトに聞いた時間と場所を再確認し、望遠鏡の向きを調節する。二人共特に知識は無いが、説明書の通りにだけ操作を行えば特に問題はおきなかった。


「さっきより、だいぶ月が赤くなってきましたね」

「19時20分。そうですね、肉眼でもはっきりと色が分かります」


早苗が望遠鏡の隣に敷いたレジャーシートに座ってスケッチブックを開くと、月人も隣に腰掛けて空を見上げた。妙に近い気もするが、今は見えるものと見えるものから感じたものを画用紙に収めるのが先決だ。
そう思っていると、早苗の片手を二の腕から撫でるようにし、指を絡めるかたちで繋いでくる。驚きのあまり振り返ると同時、持っていた鉛筆が転がっていった。


「月人さん?」

「俺は……俺は…」


彼は月を司る神。月食の影響を何か受けているのだろうか。そんな単純な思考回路も働いた。月人を窺い見れば、真剣な眼差しで月を見上げており、いつもと変わった様子は特に無い。
何も動けないまま視線を月に戻すと、月はどんどんと赤銅色に染まっていく。そろそろ月食のピークだろうかという頃になると、月人は繋いだ手にぎゅっと力を込めてきた。


「俺は、君と見る月を…とても美しいと思います」

「……私も、月人さんと空を見るのが好きです」

「…俺は、矢坂早苗。君が……君のことが」


途端、月人はタガが外れたように早苗をシートの上に押し倒し、唇が無理やりに重ねられる。息もつかせぬような程、ちゅっ、ちゅっ、と何度も軽く触れ合う唇に、早苗はほんのすこしの期待を感じてしまい、唇をうっすら開いた。
気づいたらしい月人は抵抗しない早苗を押さえつけることもなく、舌を口にねじ込んでくる。たっぷりと絡めあい、月人の唾液を何度も飲み込んだ。こういう行為が気になるお年ごろだ、早苗はそう心のなかで言い訳すると月人の背中に腕を回す。


「俺は、君が好きなんです、早苗」


キスは唇から首筋に、そして胸元も開けられてそこへも唇が降りていく。キスだけでは足りないのか、場所を変えるときには舌先が肌をなぞっていく。もどかしい刺激に、早苗は自分の人差し指の関節あたりを咥えた。
無いとは思うが、誰が来るかも分からない場所でこんなことをされているなど、他の神々に見られたらどうなるだろう。いや、既にゼウスには分かっているのかもしれない。程よい背徳感に、足の間が疼いた。


「俺はずっと君を愛したかった」

「私も…否定出来ません。月人さんなら、嫌じゃないどころか…嬉しいと思ってる」


その言葉に、月人は今までみたことが無いくらいに柔らかい笑顔を見せた。月人の笑顔が見られるならと、早苗は先を促すように目をとじる。するとまた胸元へキスが降り、そして下着をズラされ右胸の頂を吸われる。
左側は下着の中に手が入れられて、柔らかく揉まれる。心地よい刺激に、もっと欲しいと腰が疼き、早苗は自分で自分がよく分からなくなった。
確かに月人のことは好きだ、一人の男性として。それでも恋人同士でもなければ、どちらかが思いを伝えたということもない。それなのにこうして体を明け渡してしまっている。


「月人さん、好きです」


そのことが後ろめたくて伝えれば、胸を吸い上げていた口が耳元に寄せられ、


「俺は、愛しています」


少し掠れた声で告げられた。更に顔に熱が集まり、早苗は誤魔化すように月人の頭を撫でた。

まだ喰らい足りないと言いたいのか、胸を揉んでいた月人の手は早苗のスカートの中に入り込んだ。下着の上から秘部をなぞり、形を確かめるように何度も上下に動かされる。もどかしくて揺れる腰に、月人は一度胸を思い切り吸い上げると口を離し、両手で下着を脱がせにかかった。
夜風にさらされ、既に濡れているそこが少しひんやりとした。今度は直接指が触れ、探るように指先が穴に入ってくる。


「ぅっあ……待っ、」

「待てません、俺がどれだけ待ったと思っているのですか」


遠慮ない言葉の割に、様子を伺うように少しずつ指が入ってくる。痛みはほとんどなく、ぬるりと入ってくる感覚が奇妙で、早苗はぎゅっと目を閉じた。中でゆるゆると動く指が、一気に内壁を刺激してくる。
喘ぎながら、秘部への刺激と首筋へのキスを甘んじて受けているうち、指は増やされ動きも激しくなっていく。厭らしい水音が自分からしているかと思うと、恥ずかしい反面気分が高揚していくのが分かる。首筋にかかる月人の息が荒くなっていくのも、更に気分を煽ってくる。


「…もし、万が一のことがあっても、俺が君を妻に迎えます。だから…どうか受け入れてください」

「…っはい」


月人はべっとりと早苗の愛液を舐め取ると自身を取り出し、早苗を抱きしめるような体勢で挿入を始めた。裂けるような痛みが一瞬走り、目の後ろがチカチカするのを耐えると、内側の異物感が残った。亀頭部分は飲み込めたらしい。


「ぅ…あっ……」


息を止めないように気をつけながら、少しずつ体を揺すってくる刺激に耐える。月人の背中に手を回し、優しく頭を撫でてくれるのを感じつつ必死で力を抜いた。
ずぶっと一際大きな水音と共に、足の付根に月人の体が触れ、全て収めることが出来たと悟った。嬉しさのあまり月人を見つめると、彼もまた優しく微笑んでくれる。そのまま足を思い切り開かせられ、出し入れされるソレを受け止める。


「…ひっ……やっ…ん…つき、とさぁっ……ぁん…ぃや……ん…ん」

「っ…早苗、…好き、です。愛しています」


乗りかかるようにしてくる月人に、陰核も指先で刺激される。強すぎするそれに残尿感にも似た感覚が襲ってきて、早苗は必死に力を込めて堪えた。すぐ上にある月人の口から、うっぁ…という艶っぽい呻き声が聞こえ、早苗は力を抜くのは辞めた。
自分ばかりしてもらうのでは不公平だ。月人にだって気持ちよくなってほしい。下腹部に力を入れたまま、喘ぎ声は抑えるのをやめ、時折月人の首後ろに回した手で頭を撫でる。


「す、きです…月人さん…っいして、ます」

「俺、も。早苗を愛しています」


塞がれた唇ごしに喘ぎ、早苗は中に出された熱を感じながら疲労のあまり目を閉じた。












【 月を食らう、月が食らう 】











「早苗、昼食は一緒に摂りましょう」

「そうですね、今日は屋上に行きませんか?」


お互いの弁当を持って立ち上がると、自然と手が繋がれる。
背後で尊が、月人を選ぶとは流石あねぇ、と叫んでいるのが聞こえた。どうやら一番の難関である尊に認めさせるということは叶ったようだ。教室を出るときにバルドルとロキが驚いた顔で繋いだ手を見ており、早苗は少し誇らしいような気持ちになった。


「月人さん、大好きです」

「俺も、早苗だけが大切です」


早苗は枷の外れた月人の手首を見、そしてこちらを見下ろす優しい目を見、身に余る程の幸せを感じて微笑んだ。









FIN






2014/06/24
アンケのコメで頂きました、月人裏のリク回収させていただきました。
神あそは基本中出しとか気にしてません。箱庭で孕むってなさそうですし…。ただ皆さん、現実世界ではきちんと避妊してくださいね。今昔は中出しを推奨したいわけではないのです。ただ、神様だしそのあたり気にしてないんだろうなーと書いてます。




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