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※ 日本神話の女神ヒロイン
※ 月人が結衣を連れ帰った場合
その日、シャナは目を丸くして驚くということを始めてした。
「あらあら、そちらの方は一体どなたなのかしら?わたくしはシャナ、玉依比売命の眷属で、アマテラス様の補佐をしております」
「あ、私は草薙結衣です。…えっと、ゼウスさんの作った箱庭で月人さん…あーっと、ツクヨミさんと知り合いまして……」
ゼウスが『箱庭』という場所を作って神々に人間について学ばせるということは、ゼウス本人とアマテラスから聞いていた。巫女を神格化した神であるシャナには必要がないと言われたため赴かなかったが、ツクヨミがこんなの表情豊かになるとは思わなかった。
ツクヨミが一歩前に出てくると、とんでもない発言をした。
「彼女は草薙結衣。箱庭に来ていた人間代表で、俺の……妻です」
【 おかえりなさい 】
「はぁ!?あにぃ何言ってるんだよ!!コイツが嫁って…はぁ!?」
「あらあら、ふふっ。お熱いのねぇ…やや子はまだなの?名付け親はわたくしとスサノオでお願いしますね」
「お前も何言ってやがる!こんな雑草とあにぃが婚儀?駄目だ!」
ツクヨミが大好きなスサノオは、シャナが見た中でも上位に入るくらい怒っているが、それで能力の無駄遣いをしないあたりは箱庭でしっかり学んだ証拠だろう。シャナはスサノオの腕にそっと触れると、少しばかり能力を使いながら優しく語りかけた。
「スサノオ、ツクヨミは女性一人上手く選べないほど、見る目の無い殿方ですか?」
「いや…そうじゃねぇけど……」
「スサノオより余程見る目があると、わたくし思っているのですけれど…」
「あぁ!?お前、ほんっと失礼な奴だな!!」
シャナが底の厚い草履を履いているため然程身長差が無いスサノオに、シャナはそっと頭を撫でてやると、彼は途端に大人しくなってしまう。幼馴染の特権であるこれをすると、彼はとたんに従順になるのだ。ほんのり頬が染まっているのを見ると、照れて何も出来なくなるようだ。
今回も顔を真赤にして照れているスサノオに、人間の結衣という少女はくすくすと笑って見せた。箱庭に居る間にスサノオの性格も良く見てきたのだろう、見守る者特有の暖かい微笑みだった。
そこでシャナは結衣がまだ人間の着物のままであることに気づいた。この神話の神々が住まう世界では、些か目立ってしまう。
「ツクヨミ、結衣さんに着物を誂えて差し上げなくてはね。ひとまずはわたくしの物をお貸しするわ」
「ありがとうございます。このまま向かっても良いでしょうか」
「ええ、久々に3人でお茶をしましょう。箱庭でのこと、聞かせてくださいな」
「ほら、雑草。さっさといくぞ。シャナの着物を貸してもらえるんだ、ありがたく思え!」
シャナの手をそっと取って歩き出したスサノオに、後ろから慌てて歩き出した音が聞こえた。確かに恋仲であるが人前で滅多に手をとったりしない彼がこうするのは、きっと寂しかったからなのだろうなとシャナは微笑んだ。
ツクヨミが心配で大好きでずっと側に居ただろうから、結衣との関係も必然的に目にしていただろう。他所は他所、うちはうちと言うが、それでも見ていれば寂しさは募るし、寂しくなかったというのであればシャナはそれなりにスサノオに怒りをぶつけなければならない。
「ねぇ、スサノオ?」
「ん?」
「いつになく手の握り方が優しいのは、寂しかったからかしら?」
「べっつに、おれは寂しくなんてねぇ!ただ…お前待たせてたのは悪いと思ってるからな。」
「それじゃぁ、わたくしのために?」
「そうだよ、悪いか…」
迷いなくシャナの暮らす家へ向かうスサノオの、耳が少し赤く見えるのはシャナの気のせいではないはずだ。相も変わらず可愛らしいお人、と呟けば掠れた声でうるさいと返ってくる。この一年間離れてはいたが、神としての生にくらべればほんの一瞬のこと。ただ、その一瞬の別れを重く受け止めてこうして気遣ってくれるスサノオが、シャナは心から好きだと思った。
「スサノオ、今晩は泊まっていってくださいませ」
「…おま……ちょっとは恥じらいというものをだな」
「ツクヨミと結衣さんに負けていられませんものね」
今度こそ真っ赤になったであろう愛しい人の顔を想像しながら、シャナは結衣に貸し出す着物を皆で選ぶことを楽しみに、軽くなる足を動かした。
「スサノオ」
「さっきから何なんだ?」
「…おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
2014/06/11 今昔
頂いたお便りやアンケートのコメントで人気だった尊さんを書かせていただきました。
キャラ名とシチュエーションや傾向(甘いとか暗いとかえろいとか)を指定していただけたら、僕の推しキャラ以外でもリクエスト受け付けておりますm(_ _)m
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