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サナが守護輝士として名を馳せ、コールドスリープから目覚めた時、一緒に眠りについたマトイとアッシュはまだ眠っているとのことだった。あぁ、あの二人は仲睦まじく二人であることが正しいというように感じられていたので、サナは特に気にすることもなく己だけが任務に復帰することができた。


「そこで、お願いがあるんです」


目覚めた時に出会ったのは金髪をツインテールにした可愛らしいナビゲーター、シエラであった。


「おはようシエラ、今日も可愛いね。どうしたの?」

「か、可愛いだなんて…!サナさんってば、あなたが男性だったら数多のアークスたちが頬を染めるだけでは飽き足らず、毎日のようにラブレターが届いて仕事にならなかったと思いますよ!!」


と、そんな話は置いておいて。と続けたシエラは右手ですっと空中に表示されたウィンドウを操作すると、シャオからだと思われる指令がサナにもはっきり見えるようにしてくれた。
薄い水色で表示されているその指令の中には、いつもどおりにサナの心身の体調を心配する文章からはじまっていた。シャオは少し、サナに気を使いすぎるきらいがある。勿論サナは、そのシャオの心配が、彼の大切な人であるサラの大切な友人であり、結果的にシャオの大切な友人となったサナが心配なのだ。という回りくどい友愛表現であると知っている。


「新しい、メンバー?」

「はい。なんでも、ウェポノイドと呼ばれる、我々アークスの使っている武装が人の形をとったもの……だそうです。」

「武器の魂って感じ?」

「それが一番しっくりくると思います!まだ、いつ、どこで、どうやって彼女らが生まれたのかは定かではありません。そこで、ウェポノイドと一般のアークスが交流する前に、戦闘能力の確認や人となり……いえ、武器となり?を確かめるために、共に任務にあたってほしいそうなのです。」


そういったシエラはサナが何か言うまえにサササーっとウィンドウを増やしてしまった。彼女の頭のなかには、サナが断るなどということは微塵も無いのだろう。


「サナさんはブレイバーですが、今回ご一緒いただくのは彼になります」

「…ウェポノイドの一覧を見ると、女性が多いのに、男性と一緒で良いの?」

「はい、そのあたりは、シャオがサナさんと一番相性の良さそうなウェポノイドを選出したと言っていました。もうすぐここに来てくれることになっているのですが」

「なんというか、黒髪に青い瞳、綺麗ね。ミリオブライトか、私は使ったこと無いけれど、性能としてはどんな程度の武器なの?出現レア度とか」


ああ、それはですねーと武器としてのミリオブライトについて情報を表示した瞬間、サナの背後で艦橋の扉が静かに開いた。
ついに新たな相棒のお出ましかと振り返ったサナは、瞬間、言葉を無くした。

単に、彼の見た目が大変に麗しいのだ。少しクセのある黒髪に、フォトンカラーのような輝かしい瞳、そして背負っ武器はたミリオブライト。ああ、我々アークスとは違う生き物なのだな、と納得させられる美しさだ。


「ほう……数多のか弱き子羊である魂を救い守りたもうた守護輝士、かように艶麗な顔(かんばせ)に、花の姿と言うほか無い肢体、威容でありながら艶姿(えんし)なその身にまとうフォトン、風采はまさに我が一衣帯水の仲となるに相応しき女人よ」

「えーっと……えんれい?ふうさい?……サナさん、何はともあれ、彼がミリオブライトさんです」


サナは彼の言いたいことはなんとなく理解できた。
要するに、彼もまたサナのことを大変に気に入ってくれ、しかも容姿も雰囲気も、そしてアークスならば誰もが持つ固有のフォトンから感じられる人となりまで褒められたのだ。


「ありがとう、ミリオブライト。私はサナ。傾蓋知己とはまさにこのこと、儀容な風体でありながらも、孤影さえも妍麗と見せる美しさ。」

「なんと、守護輝士は我の言葉を解するのか!」

「勿論、お近づきのしるしにブライトと呼んでも良い?」

「合点、何を躊躇し心を夕闇に染める必要があろうか!」


背後でシエラが「この人たち…なんなんですかぁ!!」と叫んで端末操作の音がしたので、恐らくは二人が仲良くやっていけそうだ、とシャオに連絡を入れるのだろう。
先ほどの資料によれば、任務は周辺宙域に漂うシップの残骸、ダーカーに占拠された場所への潜入捜査だ。サナは彼と共にであれば、恐らくおもしろおかしく過ごすことができそうだと、これからの任務に思いをはせた。







2017/09/29 今昔









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