参拾壱
「村人達の手によって、大まかに分割された息子の身体は
鳥達の啄みで、綺麗な綺麗な赤い肉塊となり
やがて汚れのない真っ白な骨をのぞかせた――
素晴らしい光景だった――
天羽の魂はこの大地に
悠久なる大自然に還ったんだ」
淀仁にバレないように
黙って聞いていた悟浄と惷香は、悟空が身体の自由を奪われて動けないのだと気付く。
目は動いているし、息もしている。
多分薬でも盛られたのだろう。
「ヒソッ(なぁ…天羽ってあの鳥の名前だったよな)」
「ヒソッ(うん。多分息子さんの名前をあの鳥に付けたのね
大自然に還った息子さんの生まれ変わりと信じて…)」
「生命の還元とは、かくあるべきだと思った。
……あの時、私は確信したんだ
この崇高な思想を伝導する事が私の使命なのだと」
喋りながら、淀仁はゆっくりと悟空に近寄る。
懐に手を入れ、取り出したのは刃……
「ヒソッ(おいッ
悟空が動けねーのをいい事に、あの鳥男ッ)」
「ヒソッ(悟浄ッ!)」
ゆっくりと近寄る淀仁は
刃をスッ…と悟空の真上に振り上げた
「その為なら私は――」
ビュゴトッ――……
空を切った悟浄の錫月杖は
そのまま淀仁の腕を切り落とした……
「…あ ぁ うぁ
あ あ」
「――なにが『自然に還った』だよ」
「貴方のしてる事は使命に囚われた欲望でしかないわ!」
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