拾七



先程の妖怪の彼に聞いた村へと着いた一行は、真っ先に飯処へと足を運ぶ。


崖登りの空腹から、大量の食事も次々と各自の胃へと入って行った。
















「―――いくら『モテ期』だからってよ、妖怪のオッサンから茶に誘われるとはな」


「お茶ぐらい飲んでも良かったじゃん?
お茶菓子でたかも」


「お前らはともかく、俺と惷香が妖怪と茶ァ飲んでたらおかしいだろうが」


「…そうね
自我は保っていたみたいだけれど」


「確かに、こんな人間の村と目と鼻の先に住んでいて問題はないのでしょうかね」


「…さあな」


「……………三蔵」
















三蔵の背後のドア辺りから
数人の気配がする。

三蔵に声を掛けたが、害がある訳じゃないとばかりに小さく首を横に振って来た。
















「そんな事より今夜の宿どーすんだ宿」


「そうですねえ。
この辺一帯探してみても宿屋はありませんでしたし……」


「聞いてみたけど、この村には無いって言われたわね」















と、その時
ドア辺りの気配が近付いて来たかと思うと、声を掛けて来た。















「――あのぉ
失礼ですが、そのお姿はお坊様でいらっしゃいますか?」














彼らはどうやらこの村の住人。
三蔵の法衣を見て、近寄って来たのだ。

その言葉に、八戒は営業スマイルを浮かべ、タバコを平気で吸う三蔵の隣に立ち、商品のように扱う。














「―――ええ。
こちらに御座しますは桃源郷最高僧、玄奘三蔵法師様にあらせられます」















すると一気に歓声が上がり、嬉しそうに悦び始めた。















「――是非!!
是非とも我々に、有り難い経を詠み与えては下さりませんか!!
この村は昔から非常に信仰に厚いのでございます。」


「それは何よりです。
――しかし、この村には宿がないようですし、逗留は難しいかと―――」


「そんな、とんでもない!!
お坊様がたの休宿の場は、村をあげてお世話させて頂きます!!」


「やあ、それは助かります」


「………八戒」






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