拾六
「――大丈夫
その子達は絶対に屍肉しか食べないから」
背後からの声に振り返れば
肩に1匹の鳥を乗せた、優しい面持ちの妖怪が立っていた。
「――この鳥達は…貴方が操っているんですか?」
「え?
いやいや、僕はたんなる『守り人』だよ。
すぐ下に村が見えるだろう?
ここは数年前まで、この辺りの村の鳥葬場だったんだ」
「鳥…葬場ですか…」
「ああ……成程」
「『ちょーそう』って?」
「人が死ねば土葬や火葬にするだろう。
それらと同じだ。
鳥に食わせるという遺体処理法が風習として根付いている地域もある」
三蔵はタバコの煙を吐きながら惷香を見やる。
鳥葬場と聞いた時の反応がやけに怪訝そうな表情をしていたのが、三蔵は見落とさなかった。
「そいつはまた悪シュミな…」
「僕らの感覚ならしたら、そうかもしれませんけどね
『弔いの儀』というのは最も思想が顕れるんですよ。鳥葬は一見乱暴に思えて、実は『すべての生命を自然に還す』という…」
「
そう!!そうなんですよ!!
〜〜いやぁ、理解してくれる方と会えて光栄だなァ!」
彼は八戒の両手を掴むと、目を細めて笑いながらブンブンと大きな握手をした。
「こんな所ではなんだからお茶でもどうです?
汚い所ですけど私ひとり身なんで遠慮なく!!」
「えッ
いや、あの僕らそんな……」
彼は嬉しそうに近くにある建物を指差しながら、お茶に誘って来た。
余程八戒が鳥葬に詳しく、理解があったのが嬉しかったようで。
「足元に気をつけて…
だッああぁぁぁぁ――…」
見事に石に躓き、崖下へと転がって行ってしまった…
「あの、スミマセーーン
僕ら先を急ぐので失礼します〜〜!!」
「…聞こえたのかしら…」
「つか大丈夫?」
「…………
天然…?」
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