拾参


この頃
各地でも様々な異変が起きていた。

当然、三蔵一行が気付かないままで……
















――吠登城

















「――ニィ健一が姿を消しただと?
…あのいい加減な男の事だ。
ここでの実験に飽きて、放り出したとしても不思議はない」


「まァね。
だけど、その可能性は低いわ。
あの男は自分から蘇生実験に売り込んで来たんですもの。
アタシとこの城の施設を利用してまで、叶えたい目的をあの男は持っているのよ」















謁見の間

その玉座に座して玉面公主は紅孩児と、紅孩児の背後に立つ独角児と
いなくなったニィ健一の話をしている。















「ニィ健一が戻るまで蘇生実験は頓挫をきたすけれど
どのみち、天地開元経文がこっちの手にすべて揃ったわけじゃないもの。
アンタ達もいい加減
『恒天経文』のありかをつきとめて、さっさと手に入れて来る事ね。」


「――待て。
最たる問題は玄奘三蔵が所持する『摩天経文』の奪取だろう。
懸賞金をかける事で無駄死にする妖怪を増やすくらいなら、この俺が――」


「あらァ
何度もボロ負けして戻ってきた坊やの言えた事かしらね」


「!! 貴様……ッ
!!?」















食って掛かろうとする独角児の前には、玉面公主の部下が立ちはだかる。

そんな事も気にせず
玉面公主は不適な笑みを浮かべた。















「――三蔵一行には
天才科学者が生んだ
『秘密兵器』達と遊んでもらうわ。
命懸けでね」
















薄暗い吠登城に
渦巻く黒い闇は着実に広がっていた……








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